妊娠初期に歩けないほどの腰痛が!原因と対処法、危険なサインを解説
妊娠初期に歩くのもつらいほどの腰痛を経験すると、お腹の赤ちゃんは大丈夫だろうかと強い不安を感じるものです。
多くの妊婦が経験する症状ではありますが、痛みの裏に隠れたサインを見逃さないことも重要です。
この記事では、妊娠初期に起こるひどい腰痛の主な原因から、病院へ行くべき危険なサインの見分け方、そしてつらい痛みを和らげるための具体的な対処法までを詳しく解説します。
妊娠初期に歩けないほどの腰痛が起こる主な原因
妊娠が判明して間もない妊娠超初期の段階から、腰に強い痛みを感じることは珍しくありません。
まだお腹が大きくなっていない時期になぜ腰痛が起こるのか、不思議に思うかもしれません。
その背景には、妊娠によって女性の体に起こる急激な変化が関係しています。
主な原因として、ホルモンバランスの変化による骨盤の緩み、無意識の姿勢の崩れ、そしてつわりに伴う生活習慣の変化などが挙げられます。
ホルモンバランスの変化で骨盤が緩むため
妊娠すると、リラキシンというホルモンが分泌され始めます。
このホルモンは、赤ちゃんが産道を通りやすくするために、骨盤の関節や靭帯を緩める働きを持っています。
この作用は妊娠7週頃から始まり、出産に向けて体を準備させるために不可欠な変化です。
しかし、骨盤が緩むと安定性が失われ、体を支えるために周囲の筋肉や関節に大きな負担がかかるようになります。
この負担が、腰痛の直接的な原因となるのです。
特に、元々腰痛持ちであったり、筋力が低下していたりすると、より強い痛みとして感じられる傾向があります。
お腹をかばうことで姿勢が崩れるため
妊娠初期は、まだ外見的にお腹の膨らみは目立ちません。
しかし、妊娠していることを意識するあまり、無意識のうちにお腹をかばうような姿勢をとってしまうことがあります。
例えば、お腹に力が入らないように背中を反らせる「反り腰」の姿勢は、腰椎に直接的な負担をかけ、腰痛を引き起こす大きな原因となります。
妊娠7週目頃はつわりが本格化する時期でもあり、体調不良から猫背になったり、不自然な体勢で過ごす時間が増えたりすることも、姿勢の崩れを助長し、腰回りの筋肉の緊張を高めて痛みを悪化させます。
つわりによる運動不足や体の冷えも影響する
つわりの症状が重いと、吐き気やだるさで思うように体を動かせなくなり、運動不足に陥りがちです。
体を動かさないでいると、腰を支えるための筋力が低下するだけでなく、全身の血行も悪くなります。
血行不良は体の冷えを招き、筋肉を硬直させてしまうため、腰痛をさらに悪化させる要因となります。
また、食事が十分に摂れないことによる栄養不足や水分不足も、筋肉の疲労や血流の悪化につながり、痛みを引き起こしやすくさせます。
このように、つわりによる体調の変化が間接的に腰痛を誘発したり、症状を強めたりする場合があります。
その腰痛、大丈夫?病院へ行くべき危険なサイン
妊娠中の腰痛の多くは、ホルモンバランスの変化などに伴う生理的なものであり、過度に心配する必要はありません。
しかし、中には切迫流産や他の病気のサインとして現れる腰痛も存在します。
いつもと違うと感じる痛みや、腰痛以外の症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが必要です。
ここでは、特に注意すべき危険なサインについて具体的に説明します。
これらの症状に気づいたら、速やかにかかりつけの産婦人科に連絡してください。
出血や下腹部痛も同時に感じる場合
腰痛と同時に性器からの出血が見られる場合や、生理痛のような下腹部の痛みを伴う場合は、注意が必要です。
特に、安静にしていても痛みが治まらない、規則的なお腹の張りを感じるといった症状は、切迫流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)などの可能性も考えられます。
出血の色が鮮血であったり、量が増えたりする場合も危険な兆候です。
これらの症状は、赤ちゃんからのSOSサインかもしれません。
様子を見るのではなく、時間帯にかかわらず、すぐに産婦人科に連絡して指示を仰いでください。
時間が経つにつれて痛みが悪化する場合
安静にしても痛みが和らぐどころか、時間の経過とともにどんどん強くなっていく腰痛は、単なる妊娠に伴う生理的な痛みではない可能性があります。
痛みのあまり動けない、冷や汗が出る、夜も眠れないほどの激痛が続くといったケースでは、腎盂腎炎や尿路結石、あるいは妊娠をきっかけに発症した椎間板ヘルニアなど、別の病気が隠れていることも考えられます。
我慢できないほどの痛みや、これまで経験したことのないような種類の痛みを感じた場合は、放置せずに早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
腰以外にも足のしびれなど別の症状がある場合
腰の痛みに加えて、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけてしびれや痛み、感覚の鈍さなどを感じる場合は、「坐骨神経痛」が疑われます。
妊娠中は、ホルモンの影響で緩んだ骨盤が不安定になったり、大きくなり始めた子宮が坐骨神経を圧迫したりすることで、この症状が引き起こされることがあります。
しびれや痛みが強く、歩行や日常生活に支障をきたすようであれば、我慢せずに産婦人科医に相談してください。
症状によっては、整形外科など他の診療科との連携が必要になる場合もあります。
歩けないほどのつらい腰痛を和らげる5つの対処法
危険なサインが見られない場合のつらい腰痛は、日常生活の工夫で和らげることが可能です。
妊娠初期はまだ使える薬も限られているため、セルフケアで上手に痛みと付き合っていくことが求められます。
ここでは、すぐに実践できる具体的な対処法を5つ紹介します。
無理のない範囲で生活に取り入れて、少しでも快適に過ごせるようにしましょう。
ただし、痛みが強い場合や、どの方法を試しても改善しない場合は、遠慮なく医師に相談してください。
骨盤ベルトや妊婦帯で腰をサポートする
妊娠初期からの腰痛対策として骨盤ベルトや妊婦帯の活用は非常に有効です。
ホルモンの影響で緩んで不安定になった骨盤を外側からしっかりと支えることで腰にかかる負担を直接的に軽減できます。
骨盤が安定すると正しい姿勢を保ちやすくなり腰回りの筋肉の過剰な緊張も和らぎます。
製品によってサポートする場所や強さが異なるため自分の体に合ったものを選ぶことが重要です。
着用する位置や締め具合が適切でないと効果が得られないため購入時や使用開始時には産院の医師や助産師に相談して正しい使い方を確認するとよいでしょう。
体を温めて血の巡りをスムーズにする
体の冷えは血行不良を招き、筋肉を硬くして痛みを悪化させる原因です。
特に腰回りが冷えると、痛みが強くなる傾向があります。
つらい腰痛を和らげるためには、体を温めて血の巡りを良くすることが効果的です。
ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる全身浴や、腹巻き、レッグウォーマーなどを活用して意識的に体を温めましょう。
カイロを腰に当てるのも一つの方法ですが、低温やけどを避けるため、肌に直接貼らずに衣類の上から使用してください。
血行が促進されることで筋肉の緊張がほぐれ、痛みの緩和が期待できます。
抱き枕などを活用して楽な寝姿勢を見つける
寝ている間の姿勢が、腰痛の原因になったり悪化させたりすることがあります。
特に仰向けで寝ると、腰が反ってしまい負担がかかりやすいです。
おすすめの寝方は、体の左側を下にして横向きになり、少し膝を曲げる「シムスの体位」です。
この体勢は、お腹への圧迫が少なく、血行を妨げにくいとされています。
さらに、抱き枕やクッションを足の間に挟むことで、骨盤の高さが安定し、腰への負担をより軽減できます。
自分にとって一番楽だと感じる姿勢や、クッションの使い方を見つけることで、睡眠中の腰への負担を減らし、痛みを和らげましょう。
無理のない範囲でストレッチや軽い運動を行う
痛みがひどいときは安静が第一ですが、症状が少し落ち着いているときには、適度なストレッチや軽い運動を取り入れることが腰痛の予防・改善につながります。
運動不足は筋力低下や血行不良を招くため、意識的に体を動かすことが重要です。
四つん這いになって背中を丸めたり反らせたりする「キャットアンドドッグ」のポーズは、腰回りの筋肉を優しくほぐすのに効果的です。
ただし、自己判断で激しい運動をするのは避け、必ず事前にかかりつけの医師に相談し、許可を得てから、無理のない範囲で気持ち良いと感じる程度に行いましょう。
普段から正しい姿勢を意識して生活する
日常生活における何気ない姿勢の癖が、腰に負担をかけ続けている場合があります。
立っているときは、片足に重心をかけずに両足に均等に体重を乗せ、背筋を伸ばすことを意識します。
座るときは、椅子に深く腰掛け、背もたれをしっかり使いましょう。
背中と背もたれの間にクッションや丸めたタオルを挟むと、腰のカーブがサポートされて楽になります。
また、床の物を拾う際には、腰から曲げるのではなく、必ず膝を曲げて腰を落とすように心がけるだけで、腰への負担は大きく軽減されます。
妊娠初期の腰痛に関するよくある疑問
妊娠初期のつらい腰痛に悩む中で、「整体やマッサージに行ってもいいのだろうか」「市販の湿布を使いたいけれど大丈夫だろうか」といった疑問を持つのは自然なことです。
しかし、妊娠中は通常時とは異なり、母体と胎児の安全を最優先に考えなければなりません。
安易な自己判断は思わぬリスクにつながる可能性もあります。
ここでは、妊婦さんが抱きがちな腰痛ケアに関する疑問について、注意点とともに解説します。
整体やマッサージは受けてもいいの?
腰痛緩和のために整体やマッサージを受けたいと考えるかもしれませんが、一般的な施術院の利用は慎重になるべきです。
妊娠中の体は非常にデリケートであり、中には子宮の収縮を促してしまうツボも存在するため、専門知識のない施術者によるマッサージはリスクを伴います。
もし施術を希望する場合は、必ず「マタニティ整体」や「妊婦専門」といった、妊婦への施術経験が豊富で専門知識を持つスタッフが在籍する施設を選んでください。
そして、施術を受ける前には、必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、施術を受けても問題ないかを確認してから予約するようにしましょう。
市販の湿布や痛み止めを使っても問題ない?
つらい痛みから、手軽に使える市販の湿布薬や痛み止めの内服薬に頼りたくなるかもしれません。
しかし、自己判断での使用は絶対に避けてください。
市販の消炎鎮痛剤の多くには、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」という成分が含まれています。
この成分は、特に妊娠後期に使用すると胎児の動脈管を収縮させるなどの影響を及ぼす可能性が指摘されており、妊娠期間を通しての使用は原則として推奨されません。
どうしても痛みが我慢できない場合は、必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、妊娠中でも安全に使用できると判断された薬を処方してもらうようにしてください。
まとめ
妊娠初期に経験する歩けないほどの腰痛は、ホルモンバランスの変化による骨盤の緩みや、姿勢の崩れ、つわりに伴う運動不足など、様々な要因が複合的に絡み合って生じます。
多くの場合、骨盤ベルトの着用や体を温めること、正しい姿勢を意識するといったセルフケアで対処できます。
しかし、出血や激しい下腹部痛を伴う場合や、痛みがどんどん悪化するなどの症状は、注意が必要なサインです。
少しでも異常を感じたら、決して我慢したり自己判断したりせず、速やかにかかりつけの産婦人科医に相談することが、母体と赤ちゃんの安全を守る上で最も重要です。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






