産後、腰が痛いのはいつまで?歩けないほどの原因と対策・セルフケア方法
出産後の体の変化の中でも、多くの母親が悩まされるのが腰痛です。
中には歩くのもつらいほどの痛みに見舞われ、日常生活に大きな支障が出ることもあります。
このつらい腰痛がいつまで続くのか、なぜ起こるのかという疑問に加え、すぐに実践できる具体的な対策を知りたいと感じている方は少なくありません。
この記事では、産後の腰痛の原因から、ご自身でできるセルフケア方法、そして医療機関を受診するべき症状の判断基準までを詳しく解説します。
産後の腰痛はいつまで続く?痛みのピークと回復の目安
産後の腰痛がいつまで続くのかは個人差が大きいですが、一般的に痛みのピークは産後2〜3ヶ月頃に訪れることが多いとされています。
その後、体の回復とともに徐々に痛みは和らぎ、半年から1年ほどで気にならなくなるケースが一般的です。
ただし、骨盤の歪みが残ったり、育児による負担が大きかったりすると、痛みが長引くこともあります。
また、産後に生理が再開するとホルモンバランスが変化し、一時的に腰痛が悪化する場合もあります。
歩けないほど痛い!産後に腰痛が悪化する4つの原因
歩けない 寝返りがうてないなど、産後に深刻な腰痛を経験する方は少なくありません。なぜ、これほどまでに痛みが悪化してしまうのでしょうか。
その背景には、妊娠出産という大きな体の変化が深く関わっています。主な原因として、ホルモンの影響による関節の緩み、出産による骨盤の開きと歪み、妊娠中に低下した筋力、そして慣れない赤ちゃんのお世話による身体的負担という、4つの要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
ホルモンの影響で骨盤周りの靭帯が緩むため
妊娠中から産後にかけて、リラキシンというホルモンが分泌されます。
このホルモンには、赤ちゃんが産道を通りやすくするために、骨盤周りの靭帯や関節を緩める働きがあります。
この働きのおかげでスムーズな出産が可能になる一方、産後の骨盤は非常に不安定でグラグラした状態になります。
この不安定な骨盤を支えようとして、腰周りの筋肉に過剰な負担がかかるため、腰痛が引き起こされます。
リラキシンの影響は産後数ヶ月続くため、その間は特に腰に負担がかかりやすい状態が続きます。
出産で骨盤が開き、歪んだままになっているため
出産時には、赤ちゃんが通るために骨盤が最大限に開きます。
産後は時間をかけてゆっくりと元の状態に戻ろうとしますが、その過程で左右非対称に歪んでしまったり、開いたまま固まってしまったりすることがあります。
骨盤は上半身と下半身をつなぐ体の土台であり、この土台が歪むと、体全体のバランスが崩れてしまいます。
その結果、バランスを保とうとして腰の筋肉や関節に余計な負担がかかり続け、慢性的な腰痛の原因となります。
妊娠・出産で腹筋やインナーマッスルが衰えるため
妊娠中は大きくなるお腹を支えるため、腹筋が引き伸ばされ、筋力が低下します。
特に、体の深層部にあり、天然のコルセットとも呼ばれる腹横筋などのインナーマッスルが弱ると、背骨や骨盤を正しく支える力が衰えてしまいます。
この状態で体を動かすと、腰の骨や関節に直接的な負担がかかりやすくなり、腰痛を引き起こします。
出産による体力消耗やダメージも筋力低下の一因となり、体を支える機能が弱まった状態で育児が始まるため、腰痛が悪化しやすくなります。
赤ちゃんのお世話で無理な姿勢を続けるため
産後は授乳や抱っこ、おむつ替え、沐浴など、赤ちゃんのお世話で前かがみや中腰になる姿勢が頻繁にあります。
特に授乳は1日に何回も行うため、猫背の姿勢が長時間続くと腰に大きな負担がかかります。
また、床に置いたベビーベッドから赤ちゃんを抱き上げる動作や、チャイルドシートへの乗せ降ろしなども、腰を痛める原因となりがちです。
こうした無理な姿勢の繰り返しが、骨盤が不安定で筋力が低下している産後の体に追い打ちをかけ、腰痛を悪化させます。
今日から始められる!産後の腰痛を和らげるセルフケア方法
つらい産後の腰痛は、日常生活の少しの工夫で和らげることが可能です。
専門的な治療も重要ですが、まずは自分でできることから始めてみましょう。
ここでは、育児の合間に取り入れられる姿勢の意識や簡単なストレッチなど、今日から実践できるセルフケア方法を紹介します。
痛みが強い場合には、温めたり冷たい湿布を貼ったりすることも一つの方法ですが、マッサージや湿布の使用については、事前にかかりつけ医に相談するとより安心です。
授乳や抱っこの時に正しい姿勢を意識する
腰痛対策の基本は、腰に負担をかけない姿勢を心がけることです。
授乳の際は、授乳クッションや枕を活用して赤ちゃんを自分の胸の高さまで上げ、背筋を伸ばしましょう。
椅子に座る場合は、足元に台を置いて膝の位置を股関節より少し高くすると、骨盤が安定しやすくなります。
抱っこ紐を使う際は、赤ちゃんの体重が均等に分散されるように正しく装着することが重要です。
また、床から物を拾ったり、赤ちゃんを抱き上げたりする際は、背中を丸めずに膝を曲げて腰を落とすことを意識してください。
腰に負担の少ない寝方として、横向きで膝の間にクッションを挟む姿勢も有効です。
骨盤を安定させる産後向けストレッチを試す
こり固まった筋肉をほぐし、血行を促進するためには、無理のない範囲でのストレッチが効果的です。
産後の体はデリケートなため、産後1ヶ月検診などで医師の許可を得てから始めましょう。
まず、仰向けに寝て両膝を立てます。
両腕は体の横にリラックスして置き、息を吐きながら両膝をそろえたままゆっくりと左右に倒します。
このストレッチは、骨盤周りの筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。
痛みを感じる場合はすぐに中止し、あくまで気持ち良いと感じる範囲で行うことが重要です。
産後用コルセットや骨盤ベルトで体をサポートする
産後用のコルセットや骨盤ベルトは、緩んだ骨盤を外部から支えて安定させるための補助具です。
これらを正しく着用することで、腰にかかる負担が軽減され、痛みの緩和が期待できます。
骨盤ベルトを選ぶ際は、自分の体に合ったサイズやタイプを選び、正しい位置に装着することが不可欠です。
しかし、ベルトに頼りすぎると、体を支える自前の筋肉が育ちにくくなる可能性もあります。
そのため、長時間の連続使用は避け、ストレッチや軽い運動と併用しながら、補助的に活用するのが望ましい使い方です。
セルフケアで改善しない…どこに相談すればいい?
様々なセルフケアを試しても腰痛が一向に良くならない、あるいは悪化する一方だと、不安になるものです。
そのような場合は、自己判断で我慢を続けるのではなく、専門家の助けを借りることを検討しましょう。
産後の腰痛に対応してくれる場所はいくつかあり、症状によって適切な相談先が異なります。
まずはかかりつけの産婦人科、症状によっては整骨院や整体院、あるいは整形外科といった病院への受診が選択肢となります。
自分の症状に合った場所を選ぶことが、的確なケアへの第一歩です。
まずはかかりつけの産婦人科で診てもらう
産後の体調不良に関する最初の相談窓口の一つとして、出産でお世話になったかかりつけの産婦人科が挙げられます。医師は妊娠中からの体の状態を把握しているため、現在の腰痛が産後の正常な回復過程で生じているものか、あるいは他の原因が考えられるのかを判断しやすい立場にあります。
まずは1ヶ月検診などの機会に腰痛の悩みを相談してみましょう。診察の結果、必要であれば整形外科などの専門医や、信頼できる整体院などを紹介してもらえることもあります。
かかりつけの産婦人科以外にも、地域の保健センター、日本助産師会、日本産後ケア協会、こども家庭庁親子のための相談LINEなど、様々な相談窓口がありますので、ご自身に合った方法で相談を検討することも大切です。
骨盤の歪みは整骨院や整体院でケアする
腰痛の原因が骨盤の歪みやそれに伴う筋肉のアンバランスにあると考えられる場合、整骨院や整体院でのケアが有効な選択肢となります。
専門家による手技で骨盤の位置を整え、硬くなった筋肉をほぐすことで、体のバランスを改善し、痛みの根本的な原因にアプローチします。
ただし、施設によって施術方針や技術レベルは様々です。
そのため、事前に「産後骨盤矯正」や「マタニティ整体」など、産後の女性の体を専門的に扱っている実績のある整骨院を選ぶことが重要です。
しびれや激痛がある場合は整形外科を受診する
腰の痛みだけでなく、お尻から足にかけてのしびれや痛み、足に力が入らないといった症状がある場合は、単なる筋肉痛や骨盤の歪みではない可能性があります。
これらの症状は、椎間板ヘルニアなど、神経が圧迫されることで起こる病気のサインかもしれません。
このようなケースでは、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに整形外科を受診してください。
整形外科では、レントゲンやMRIといった画像検査によって骨や神経の状態を詳しく調べ、痛みの原因を正確に診断した上で、適切な治療を受けることができます。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ行くべき腰痛のサイン
ほとんどの産後の腰痛は、時間と適切なケアによって改善していきますが、中には危険な病気が隠れている可能性もあります。
セルフケアで様子を見るべきではない、緊急性の高い腰痛のサインを知っておくことは非常に重要です。
これから挙げるような症状が一つでも見られる場合は、我慢せずにすぐに医療機関を受診してください。
早期の診断と治療が、深刻な事態を防ぐことにつながります。
足のしびれや麻痺を伴う場合
腰痛に加えて、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけてしびれやピリピリとした痛みを感じる場合は、坐骨神経が圧迫されている可能性があります。
さらに、足の指が動かしにくい、スリッパが脱げやすいなど、足に力が入らない麻痺の症状が現れたら、特に注意が必要です。
これは腰椎椎間板ヘルニアなどが原因で、神経に障害が起きているサインかもしれません。
放置すると症状が悪化したり、後遺症が残ったりする危険性があるため、速やかに整形外科を受診するべき状態です。
安静にしていても痛みが続く場合
体を動かした時だけでなく、横になって休んでいる時や寝ている時でも痛みが全く和らがない、あるいは夜中に痛みで目が覚めてしまうような場合は、一般的な腰痛とは異なる原因が考えられます。
筋肉や骨格系の問題による痛みは、安静にすることで軽減する傾向があります。しかし、安静時にも痛みが続く場合は、内臓の病気や感染症、まれに腫瘍などが原因となっている可能性も否定できません。原因を特定するため、早めに医療機関を受診し、詳しい検査を受けることが推奨されます。
発熱や吐き気など他の症状もある場合
腰痛とともに、38度以上の発熱、悪寒、吐き気、嘔吐、排尿時の痛み、残尿感、血尿といった全身症状が見られる場合は、緊急を要する可能性があります。
これらの症状は、腎臓の細菌感染である腎盂腎炎や、子宮・卵巣の炎症、あるいは背骨の感染症(化膿性脊椎炎)など、深刻な病気のサインであることが考えられます。
これらの病気は速やかな治療が必要となるため、様子を見ずに、夜間や休日であっても産婦人科や救急外来を受診してください。
まとめ
産後の腰痛は、ホルモンバランスの変化、出産による骨盤の開きや歪み、腹筋を中心とした筋力の低下、そして育児による身体的負担といった複数の要因が重なって起こります。
多くの場合は、日常生活での正しい姿勢の意識、産後向けのストレッチ、骨盤ベルトの活用といったセルフケアによって、時間とともに改善に向かいます。
しかし、セルフケアで改善が見られない場合や、痛みが長引く、あるいは我慢できないほどの激痛、足のしびれ、発熱などを伴う場合は、自己判断せず専門の医療機関に相談することが重要です。
自分の体の声に耳を傾け、無理をせず適切なケアを選択してください。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






