ぎっくり腰で歩けるけど痛い時の対処法|仕事や病院へ行く目安

突然ぎっくり腰になり、歩けるものの強い痛みがあると、どのように対処すれば良いか不安になるものです。
痛みを我慢して普段通りに仕事や生活を続けると、症状が悪化する可能性もあります。

この記事では、歩ける程度のぎっくり腰になった際の症状レベルの確認方法から、すぐにできる応急処置、やってはいけないこと、病院へ行くべきかの判断基準までを解説します。
適切な対処法を知り、早期回復を目指しましょう。

歩けるけど痛い「ぎっくり腰」はどんな状態?症状レベルの確認

ぎっくり腰は、医学的には「急性腰痛症」と呼ばれ、腰部の筋肉や靭帯に急な負荷がかかることで起こる捻挫のような状態を指します。
「歩けるけど痛い」と感じる場合でも、その痛みの程度は人それぞれです。
日常生活は送れるものの常に違和感があるレベルから、特定の動きで激痛が走るレベルまで様々です。

まずは自身の症状がどの程度なのかを客観的に把握することが、適切な対処を行うための第一歩となります。

軽度のぎっくり腰:日常生活は送れるが腰に違和感がある状態

軽度のぎっくり腰は、歩行や基本的な日常生活は可能ですが、腰に重さや張り、鈍い痛みといった違和感が常に伴う状態です。
前かがみになったり、長時間同じ姿勢でいたりすると痛みが強まることがあります。
無意識に腰をかばうような動きになり、普段通りのスムーズな動作が難しくなることも特徴の一つです。

この段階では「まだ動けるから大丈夫」と無理をしがちですが、腰に負担をかけ続けると症状が悪化し、中等度以上に進行する可能性があるため注意が必要です。
軽度であっても、初期の段階で適切なケアを行うことが、早期回復と悪化防止のために求められます。

中等度のぎっくり腰:特定の動作で強い痛みを感じる状態

中等度のぎっくり腰は、安静にしていれば痛みはそれほど強くないものの、椅子から立ち上がる、顔を洗うために屈む、寝返りを打つといった特定の動作の際に、電気が走るような鋭い痛みを感じる状態です。
歩くことはできても、痛みでスムーズに歩けなかったり、一歩踏み出すごとに痛みが響いたりします。
痛みのあまり、不意な動きでバランスを崩し、転倒するリスクも考えられます。

日常生活に明らかな支障が出始め、セルフケアだけでは痛みのコントロールが難しくなることが多いです。
このレベルの痛みを感じる場合は、無理に行動せず、応急処置を行いながら慎重に過ごす必要があります。

自己判断は危険!放置すると症状が悪化する可能性も

歩けるからたいしたことはないという自己判断は危険を伴います。
ぎっくり腰の痛みの中には、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった、神経に影響を及ぼす可能性のある病気が隠れている場合もあるからです。

痛みを我慢して放置すると、症状が慢性化したり、炎症が広がってさらに動けなくなったりする恐れがあります。
また、痛みをかばう不自然な姿勢を続けることで、腰以外の背中や股関節、膝などにも負担がかかり、新たな痛みを引き起こす原因にもなりかねません。
痛みが改善しない、または悪化するようであれば、安易に考えずに専門家の診断を受けるべきです。

ぎっくり腰で歩けるけど痛い時にすぐできる応急処置

ぎっくり腰を発症した直後は、腰の組織が炎症を起こしている急性期にあたります。
この時期に適切な応急処置を行うことで、炎症の拡大を抑え、痛みを和らげることが可能です。
痛みのために慌ててしまいがちですが、まずは落ち着いて、これから紹介する方法を試してみてください。

自宅や職場でもすぐに行える対処法を知っておくことで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることにつながります。

まずは患部を冷やして炎症を和らげる(アイシング)

ぎっくり腰の発症直後は、患部で炎症が起きて熱を持っているため、温めるのではなく冷やすことが基本です。
氷のうや保冷剤などをタオルで包み、痛みを感じる部分に15分から20分程度当てて冷やします。
これを1日に数回繰り返すことで、血管が収縮し、炎症の広がりや痛みを抑制する効果が期待できます。

冷やしすぎると凍傷のリスクがあるため、直接肌に当てるのは避けてください。
消炎鎮痛成分が含まれている冷湿布も痛みの緩和に役立ちますが、深部まで冷やす効果はアイシングに劣るため、補助的な手段として考え、可能であれば氷などで直接冷やすと良いでしょう。

コルセットを活用して腰への負担を軽減する

コルセットや骨盤ベルトは、腹圧を高めて体幹を安定させ、腰椎への負担を軽減するのに役立ちます。
特に、立ち上がったり歩いたりする際に装着すると、腰が支えられて痛みが和らぎ、動作が楽になります。
仕事などでどうしても動かなければならない場合には、症状の悪化を防ぐためにも有効な手段です。

ただし、四六時中装着していると、腰回りの筋肉が衰えてしまう原因にもなるため、使用は動く時や痛みが強い時だけに限定するのが望ましいです。
装着する際は、正しい場所に適切な強さで巻き、体を締め付けすぎないように注意してください。

安静にしすぎず無理のない範囲で体を動かす

かつてはぎっくり腰になったら絶対安静が常識でしたが、現在では痛みが許す限り、可能な範囲で日常生活を続ける方が回復を早めるという考え方が一般的です。
全く動かずに寝たきりでいると、腰周りの筋肉が硬くなり、血行も悪化するため、かえって回復が遅れることがあります。

激しい痛みが少し落ち着いたら、室内をゆっくり歩いたり、座ったり立ったりする動作を試みたりと、無理のない範囲で体を動かし始めるのが良いでしょう。
ただし、腰を大きくひねったり、急に伸びをしたりするような、痛みを誘発する動きは避けるべきです。

横向きで膝を曲げるなど楽な姿勢で休息をとる

休息をとる際には、腰への負担が最も少ない楽な姿勢を見つけることが重要です。
一般的には、横向きに寝て両膝を軽く曲げ、足の間にクッションや抱き枕を挟む「胎児のような姿勢」が推奨されます。

この姿勢は腰のカーブが自然な状態に保たれ、筋肉の緊張が和らぎます。
仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや丸めたタオルを置き、膝を少し立てることで腰の反りを軽減できます。
うつ伏せは腰に負担をかけやすいため避けたほうが無難です。
特に痛みが強い夜間は、寝返りも困難になることがあるため、就寝前に自分にとって最も楽な姿勢を見つけておきましょう。

症状を悪化させかねない!ぎっくり腰の時にやってはいけないこと

ぎっくり腰の痛みを少しでも早く和らげたい一心で、良かれと思って取った行動が、かえって症状を悪化させてしまうことがあります。
特に炎症が起きている発症直後の急性期には、避けるべきNG行動がいくつか存在します。

回復を遅らせないためにも、正しい知識を持つことが不可欠です。
ここでは、ぎっくり腰の際に無理に行うべきではない、代表的な対処法について解説します。

痛い部分を自己判断でマッサージする

腰に痛みを感じると、ついその部分を揉んだり押したりしたくなるかもしれませんが、自己判断でのマッサージは絶対にやめるべきです。
ぎっくり腰の急性期は、筋肉の繊維や周辺組織が損傷し、炎症を起こしている状態です。
そこに外部から強い刺激を加えると、炎症がさらに悪化し、痛みを増強させてしまう危険性があります。

専門家ではない人が行うマッサージは、損傷部位をさらに傷つけることにもなりかねないため、痛む場所は安静にして触らないようにするな、という意識を持つことが重要です。

痛みが強い時期に湯船で体を温める

お風呂で体を温めると痛みが和らぐイメージがありますが、ぎっくり腰の急性期においては逆効果です。
発症から2〜3日の痛みが強い時期は、患部が炎症を起こしているため、温めることで血行が促進され、炎症反応が活発になってしまいます。
その結果、腫れや痛みが悪化する可能性があります。
この時期の入浴は、湯船には浸からず、シャワーで手短に済ませるようにしてください。

痛みが和らぎ、炎症が治まる慢性期(発症後3日以降が目安)に入れば、温めることで血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれて回復を助けます。

無理に体を動かしたりストレッチをしたりする

安静にしすぎないことは大切ですが、痛みを我慢して無理に体を動かすのは禁物です。
特に、腰を反らしたり、深く前屈したり、体をひねったりするようなストレッチは、炎症を起こしている筋肉や靭帯にさらなるダメージを与えてしまう恐れがあります。
急性期に良かれと思ってストレッチを行うと、筋肉の断裂を助長し、回復を大幅に遅らせる原因になりかねません。

痛みが強い間は、あくまで日常生活に必要な最低限の動きにとどめ、痛みを誘発するような動作は避けるべきです。
ストレッチは、痛みが十分に引いてから専門家の指導のもとで開始するのが安全です。

歩けるぎっくり腰でも病院へ行くべき?受診のタイミングと診療科

歩ける程度の痛みだからとぎっくり腰を軽視して医療機関を受診しない人も少なくありません。
しかし、その痛みの裏に重大な病気が隠れている可能性もゼロではありません。
特定のサインが見られる場合やセルフケアをしても痛みが改善しない場合は、専門家による正確な診断が必要です。

ここでは病院を受診すべき具体的なタイミングやどの診療科を選べば良いかについて解説します。

足のしびれや排尿障害などがあればすぐに医療機関へ

腰の痛みに加えて、足のしびれ、力が入らないといった症状や、尿が出にくい、頻尿、便失禁などの排尿・排便の異常が見られる場合は、単なるぎっくり腰ではない可能性があります。
これらの症状は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などによって脊髄や神経の根元が強く圧迫されているサインかもしれません。

特に、排尿・排便障害は「馬尾症候群」と呼ばれる緊急性の高い状態で、放置すると後遺症が残る危険性もあります。
このような「レッドフラッグサイン」と呼ばれる危険な兆候が一つでも現れた場合は、様子を見ずに直ちに整形外科を受診してください。

2〜3日経っても痛みが改善しない場合も受診を検討

ぎっくり腰の痛みは、発症から2日目、3日目をピークに徐々に和らいでいくのが一般的な経過です。
アイシングやコルセットの着用といった応急処置を行い、安静を心がけても痛みが全く軽減しない、あるいはむしろ日に日に強くなっていく場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

発症から2日、3日経っても改善の兆しが見られない場合、単なる筋肉や筋膜の問題だけでなく、椎間板や骨に何らかの異常が生じている可能性も考えられます。
専門家による診察を受けることで、痛みの原因を正確に特定し、適切な治療へと進むことができます。

何科を受診すべき?整形外科と整骨院の違い

ぎっくり腰になった際、まず受診を検討すべきは整形外科です。
整形外科は医師が在籍しており、問診や診察に加え、レントゲンやMRIといった画像検査によって骨、椎間板、神経などの状態を詳細に調べ、正確な診断を下すことができます。
その診断に基づき、痛み止めの処方、注射、リハビリテーションといった医学的な治療が行われます。

一方、整骨院(接骨院)では柔道整復師が施術を行いますが、医師ではないため診断や投薬はできません。
原因がはっきりしない場合や神経症状がある場合は、まず整形外科で診断を受けるのが適切です。
整形外科での治療は健康保険が適用されますが、整骨院の施術は原因によっては保険適用外となる点も異なります。

ぎっくり腰中の仕事や回復期間に関するよくある疑問

ぎっくり腰になると、痛みそのものだけでなく、仕事への影響やいつ治るのかといった不安がつきまといます。
「この痛みで仕事に行っても大丈夫だろうか」「回復までには平均で何日経てばよいのか」など、具体的な疑問を持つ方も多いでしょう。

ここでは、ぎっくり腰の際の仕事の判断、一般的な回復期間、そして日々のケアに関するよくある質問についてお答えします。

Q. 歩ける程度の痛みなら仕事は休まなくてもいい?

歩けるからといって、必ずしも仕事に支障がないわけではありません。
デスクワークであっても、長時間同じ姿勢で座り続けることは腰に大きな負担をかけます。
ましてや、重い物を運んだり、中腰での作業が多かったりする肉体労働の場合は、症状を悪化させるリスクが非常に高いため、可能であれば発症から1〜2日は仕事を休んで安静にすることが望ましいです。

どうしても出勤が必要な場合は、コルセットを着用する、こまめに休憩を挟んで姿勢を変える、職場の理解を得て作業内容を調整してもらうなどの対策を講じるべきです。
痛みが強い場合は、無理をせず医療機関で痛み止めの薬を処方してもらうことも選択肢の一つです。

Q. 痛みが治まるまでにはどれくらいの期間がかかる?

ぎっくり腰の回復期間には個人差がありますが、一般的な目安として、最も痛みが強い期間は発症から2~3日です。
その後は徐々に痛みが和らぎ、多くの場合、1週間から2週間程度で日常生活に大きな支障がないレベルまで回復します。
発症から5日目くらいになると、デスクワークなどの軽作業であれば復帰できる人が多いようです。

ただし、違和感や軽い痛みが完全になくなるまでには、数週間から1ヶ月以上かかることもあります。
もし、10日目になっても歩行が困難なほどの強い痛みが続くようであれば、他の病気の可能性も考えられるため、整形外科を受診することをおすすめします。

Q. 湿布は効果がある?お風呂はいつから入っていい?

湿布は、含まれる消炎鎮痛成分によって痛みを緩和する効果が期待できます。
ぎっくり腰の発症直後で、患部に熱感がある急性期には、炎症を抑える効果のある冷感タイプの湿布が適しています。
数日経って痛みが和らぎ、筋肉の硬さやこわばりが気になる慢性期に移行したら、血行を促進する温感タイプの湿布に切り替えるのも良いでしょう。

お風呂については、痛みが最も強い急性期(発症から2~3日)は湯船に浸かるのを避け、シャワーで済ませるのが原則です。
炎症が治まり、痛みが楽になってきたら、ぬるめのお湯にゆっくり浸かって体を温めることで、血行が改善し筋肉の緊張緩和に役立ちます。

つらい痛みを繰り返さないためのぎっくり腰予防策

ぎっくり腰は再発しやすいという特徴があり、一度経験した人の多くが再発の不安を抱えています。
しかし、日頃から腰に負担をかけない生活習慣を意識し、適切なケアを続けることで、そのリスクを大幅に減らすことが可能です。

痛みがなくなった後も油断せず、予防に取り組むことが、快適な日常生活を送るための鍵となります。
ここでは、今日から始められるぎっくり腰の予防策を紹介します。

日常生活で心がけたい正しい姿勢と体の使い方

ぎっくり腰の再発予防には、日常生活における姿勢や動作の見直しが欠かせません。
デスクワークの際は、椅子に深く腰掛け、背筋を自然に伸ばした姿勢を保ちます。
足裏全体が床に着くよう椅子の高さを調整し、モニターを目線の高さに合わせる工夫も有効です。
長時間同じ姿勢でいることを避け、1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かすようにしましょう。

物を持ち上げる際は、腰から曲げるのではなく、必ず膝を曲げて腰を落とし、体全体で持ち上げることを習慣づけます。
足元が不安定な場所での無理な作業は、転倒のリスクを高め、腰への急な負担につながるため避けるべきです。

腰回りを支えるための筋力トレーニング

腰椎を安定させ、天然のコルセットの役割を果たす腹筋や背筋などの体幹筋力を強化することは、ぎっくり腰の再発予防に非常に効果的です。
ただし、痛みが残っている状態でのトレーニングは症状を悪化させる危険があるため、完全に痛みが引いてから開始してください。
まずは、仰向けに寝てお腹をへこませる「ドローイン」や、うつ伏せで肘とつま先で体を支える「プランク」など、腰に過度な負担をかけないトレーニングから始めると良いでしょう。

運動の前後には、筋肉の柔軟性を高めるためのストレッチを取り入れると、けがの予防にもなります。
無理のない強度で、継続的に行うことが重要です。

床の物を拾う時や起床時の動作に注意する

ぎっくり腰は、日常の何気ない動作が引き金となることが少なくありません。
特に注意したいのが、床に落ちた物を拾う時です。
前かがみになって腕の力だけで拾おうとすると、腰に急激な負担がかかります。
物を拾う際は、面倒でも必ず一度しゃがみ、膝をしっかりと曲げてから拾い上げるようにしましょう。

また、朝の起床時も油断できません。
仰向けの姿勢から勢いよく起き上がると、腰に大きなストレスがかかります。
まずは横向きになり、片方の腕で上半身を支えながら、ゆっくりと起き上がる習慣をつけることで、腰への負担を大幅に減らすことができます。

まとめ

ぎっくり腰で歩ける程度の痛みがある場合、まずは症状のレベルを把握することが必要です。
応急処置として、発症直後は患部を冷やし、コルセットで腰を安定させます。
ただし、安静にしすぎず、痛みのない範囲で動くことも回復を促します。
自己判断によるマッサージや、急性期に体を温める行為は症状を悪化させるため避けるべきです。

足のしびれや排尿障害といった危険なサインが見られる場合や、2〜3日経っても痛みが改善しない場合は、速やかに整形外科を受診してください。
回復後は、正しい姿勢や動作を心がけ、体幹を鍛えるなど、再発予防に努めることが肝心です。

この記事の監修者

髙下葉月
大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。

【資格】
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー

【経歴】
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任

【SNS】
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/