妊娠中期の腰痛はどんな痛み?原因と対策、危険なサインを解説

妊娠5ヶ月(16週)から7ヶ月(27週)にあたる妊娠中期は、心身ともに安定する時期と言われますが、多くの妊婦が腰痛を経験します。
妊娠5ヶ月の3週目や4週目、あるいは7ヶ月に入った頃から痛みが気になりだす方も少なくありません。
この時期の腰痛は、お腹が大きくなることによる体の変化が主な原因ですが、中には注意が必要なケースも存在します。
この記事では、妊娠中期の腰痛の具体的な症状から原因、今日からできる対策・対処法、そして受診すべき危険な腰痛のサインまでを解説します。
妊娠中期にみられる腰痛の具体的な症状
妊娠中期に起こる腰痛は、ズキズキとした痛みやギシギシときしむような痛みなど、人によってさまざまです。
特に寝起きにひどい腰痛を感じたり、生理痛に似た鈍い痛みが続いたりすることもあります。
痛みの感じ方や場所によって原因が異なる場合があるため、自身の症状がどのタイプに近いかを確認してみましょう。
腰痛の具体的な症状を3つのタイプに分けて紹介します。
腰の骨あたりがズキズキと痛む
背骨の中心である腰椎のあたりに、ズキズキ、ジンジンとした痛みを感じるタイプです。
これは、大きくなったお腹の重みで体の重心が前に移動し、バランスを取ろうとして腰を反らせる「反り腰」の姿勢になることが主な原因です。
この姿勢は腰の骨やその周りの筋肉に直接的な負担をかけるため、持続的な痛みを引き起こします。
特に、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けることによって、筋肉がこり固まって血行が悪くなり、痛みが悪化しやすくなります。
立ち上がるときや、少し動いただけでも痛みを感じることもあります。
お尻や骨盤周りがギシギシするような痛み
お尻の真ん中にある仙骨や、その両脇にある仙腸関節、骨盤全体がギシギシ、ミシミシときしむように痛む症状です。
この痛みは、出産に向けて骨盤の関節を緩める「リラキシン」というホルモンの影響で骨盤が不安定になることが原因で起こります。
緩んだ骨盤を支えようと、お尻や骨盤周りの筋肉に過剰な負担がかかるため、痛みが生じます。
特に、歩き始めや寝返りをうつとき、椅子から立ち上がるといった動作の際に痛みを感じやすく、足の付け根にまで痛みが広がることもあります。
腰というよりは、お尻や骨盤そのものが痛いと感じるのが特徴です。
片側のお尻から足にかけてしびれるような痛み
お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけて、片側だけに電気が走るような鋭い痛みや、ピリピリとしたしびれを感じる症状です。
これは「坐骨神経痛」と呼ばれ、大きくなった子宮が骨盤内を通る坐骨神経を圧迫することで引き起こされます。
症状は左側だけ、あるいは右側だけというように片方に出ることが多く、特に左だけ痛みやしびれが出るケースも少なくありません。
長時間座っていた後や、朝起きた時に症状が強く出ることがあります。
痛みが強いと、歩いたり立ったりするのもつらくなるなど、日常生活に支障をきたす場合もあります。
なぜ?妊娠中期の腰痛を引き起こす3つの原因
妊娠中期の腰痛は、多くの妊婦が経験するマイナートラブルの一つですが、その背景には妊婦特有の急激な体の変化が関係しています。
ホルモンの作用による骨盤の緩み、大きくなるお腹を支えるための姿勢の変化、そして体重の増加という3つの要素が複合的に絡み合い、腰に大きな負担をかけています。
これらの原因を理解することは、適切な腰痛対策を行う上で重要です。
ホルモンの作用で骨盤の関節がゆるむため
妊娠すると、リラキシンというホルモンが分泌されます。
このホルモンには、出産の際に赤ちゃんがスムーズに産道を通れるよう、骨盤の関節や靭帯を緩める働きがあります。
この作用は妊娠初期から始まりますが、お腹が大きくなる中期以降、その影響が顕著になります。
関節が緩むことで骨盤は不安定な状態になり、体を支えるために骨盤周りの筋肉や靭帯に余計な負担がかかります。
この負担が、腰やお尻周りの痛みを引き起こす直接的な原因となります。
骨盤がグラグラするような感覚を伴うこともあります。
大きくなったお腹を支えようと反り腰になるため
妊娠中期になるとお腹が前にせり出してくるため、体の重心が前方に移動します。
すると、妊婦は無意識のうちに上半身を後ろに反らせて、倒れないようにバランスを取ろうとします。
この姿勢がいわゆる「反り腰」です。
反り腰の姿勢は、腰椎(腰の骨)に大きなカーブを作り、背中の筋肉を常に緊張させます。
この状態が続くと、腰の筋肉が疲労して硬くなり、血行も悪くなるため、腰痛が生じやすくなります。
もともと腹筋や背筋の力が弱い人は、体を支える力が不足しているため、より反り腰になりやすく、腰痛が悪化する傾向が見られます。
体重の増加で腰の筋肉に負担がかかるため
妊娠中期は、胎児の成長が著しく、羊水や胎盤、血液量なども増加するため、妊婦の体重も急激に増える時期です。
個人差はありますが、数キログラムの体重増加がみられます。
この増えた体重を日常的に支えなければならないため、腰や背中、足の筋肉には常に大きな負荷がかかっている状態です。
特に体を支える中心である腰には、立っている時も座っている時も持続的な負担がかかり続けます。
この負荷が筋肉の疲労を蓄積させ、こりや痛みを引き起こす一因となります。
急激な体重増加は、腰への負担をさらに増大させるため注意が必要です。
今日から試せる!つらい腰痛を和らげるセルフケア方法
つらい腰痛は、日常生活のちょっとした工夫で和らげることが可能です。
座り方や寝方を見直したり、便利なアイテムを活用したりすることで、腰への負担を軽減できます。
ただし、セルフケアを行う際は、無理をしないことが大前提です。
マッサージやストレッチなども含め、自分に合った方法をいくつか試してみて、少しでも快適なマタニティライフを送るためのヒントを見つけてください。
クッションを使って腰に負担の少ない姿勢で座る
座っている時の姿勢は、腰痛に大きく影響します。
椅子に座る際は、深く腰掛けて背筋を伸ばし、背もたれと腰のすき間にクッションや丸めたタオルを挟むと、背骨の自然なS字カーブが保たれて腰への負担が軽くなります。
床に座る場合は、あぐらをかき、お尻の下に座布団やクッションを敷いて少し高さを出すと、骨盤が後ろに傾くのを防ぎ、楽な姿勢を保てます。
ソファなど柔らかすぎてお尻が沈み込む椅子は、腰に負担がかかりやすいため避けた方が良いでしょう。
長時間同じ姿勢で座り続けることも腰痛の原因になるため、こまめに立ち上がって体を動かすことを心がけてください。
抱き枕などを活用して横向きで寝る
妊娠中期以降は、お腹の重みで仰向けに寝るのがつらくなります。
仰向けの姿勢は、大きくなった子宮が背中側の太い血管を圧迫し、血行不良や腰痛を引き起こす可能性があるため、横向きの寝方が推奨されます。
特に、体の左側を下にする「シムスの体位」は、血行を妨げにくくリラックスしやすい姿勢です。
その際、抱き枕やクッションを足の間に挟むと、上の足の重みが下の足や腰にかかるのを防ぎ、骨盤が安定して腰への負担が軽減されます。
抱き枕が背中側にあると、体を預けられるため安心感も得られます。
自分に合った寝方を見つけることが快眠にもつながります。
骨盤ベルトでグラグラする骨盤をサポートする
ホルモンの影響で緩んで不安定になった骨盤を、外側から支えて安定させるのが骨盤ベルトです。
骨盤を適切にサポートすることで、腰周りの筋肉にかかる負担が軽減され、腰痛の緩和が期待できます。
重要なのは正しい位置に装着することです。
お腹を締め付けるのではなく、骨盤の位置(おへその下あたりにある出っ張った骨と、足の付け根の外側にある出っ張った骨を結んだライン)に巻くようにします。
製品によって着用方法が異なるため、説明書をよく確認してください。
着用のタイミングや長時間の使用については、かかりつけの医師や助産師に相談してから使用を開始すると安心です。
無理のない範囲でストレッチやウォーキングを行う
腰痛の緩和や予防には、適度な運動が効果的です。
特に、腰回りの筋肉の緊張をほぐし、血行を促進するストレッチは手軽に始められます。
四つん這いになって背中を丸めたり反らしたりする「猫のポーズ」などは、腰に負担をかけずに筋肉を動かせます。
また、マタニティヨガやマタニティスイミング、ウォーキングといった有酸素運動も、全身の血行を良くし、筋力維持に役立ちます。
ただし、運動を始める前には必ずかかりつけの医師に相談し、許可を得ることが必要です。
体調が良い時に、お腹が張らない程度に、無理のない範囲で行うことが重要です。
湯船に浸かって体を温め血行を良くする
体を温めて血行を促進することは、筋肉の緊張を和らげ、腰痛を緩和するのに役立ちます。
シャワーだけで済ませず、できれば毎日湯船に浸かる習慣をつけましょう。
お湯の温度は38〜40℃程度のぬるめに設定し、10〜15分ほどゆっくりと浸かるのがおすすめです。
体が温まることでリラックス効果も得られ、心身の緊張がほぐれます。
ただし、熱すぎるお湯や長時間の入浴は、のぼせや脱水、急激な血圧の変化を引き起こす可能性があるため避けてください。
また、浴室は滑りやすいため、転倒には十分に注意し、手すりを利用するなど安全対策を心がけましょう。
ヒールのない歩きやすい靴を選ぶ
妊娠中の靴選びは、腰痛対策において非常に重要です。
ヒールの高い靴を履くと、体の重心が前方に偏り、バランスを取るために自然と反り腰の姿勢が強まります。
この姿勢は腰への負担を直接的に増大させ、腰痛を悪化させる原因となります。
妊娠中は、かかとが低く安定感のあるフラットシューズやスニーカーを選びましょう。
また、地面からの衝撃を吸収してくれるクッション性の高い靴は、腰だけでなく膝への負担も軽減してくれます。
妊娠中は足がむくみやすくなるため、少しゆとりのあるサイズを選び、紐やマジックテープで調節できるタイプも便利です。
自己判断はNG!妊娠中の腰痛で注意すべきこと
腰痛がつらいと、すぐにでも痛みを和らげたいと思うものですが、妊娠中は自己判断での対処が思わぬトラブルにつながることもあります。
特に、市販薬の使用や日常生活での無理な動作は慎重になる必要があります。
お腹の赤ちゃんへの影響を第一に考え、不安なことや判断に迷うことがあれば、まずはかかりつけの医師や助産師に相談するという意識を持つことが大切です。
市販の湿布や痛み止めを使用する前に医師へ相談する
腰痛がひどい時、市販の湿布薬や痛み止めに頼りたくなるかもしれませんが、自己判断での使用は避けるべきです。
湿布や飲み薬に含まれる成分の中には、皮膚から吸収されたり、内服したりすることで、胎児に影響を及ぼす可能性があるものが存在します。
特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含む一部の湿布薬は、妊娠後期に使用すると胎児の動脈管を収縮させるおそれがあります。
これは頭痛などの痛みに対しても同様です。
薬を使用したい場合は、必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、妊娠中でも安全に使用できるものを処方してもらうようにしてください。
腰に負担のかかる重いものを持つ動作は避ける
妊娠中はホルモンの影響で骨盤の関節が緩んでいるため、普段よりも腰を痛めやすい状態です。
そのため、重いものを持つ動作は極力避けるべきです。
買い物袋や上の子の抱っこなど、日常生活で重いものを持たざるを得ない場面もあるかもしれません。
そのような場合は、持ち方に工夫が必要です。
床にあるものを持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、必ず膝を曲げて腰を落とし、荷物を体に引き寄せてからゆっくりと立ち上がるようにします。
この動作により、腰への負担を大幅に軽減できます。
可能であれば、パートナーや家族に協力をお願いすることも検討しましょう。
ただの腰痛じゃないかも?病院を受診すべき危険なサイン
妊娠中の腰痛のほとんどは、体の変化に伴う生理的なものですが、中には流産や切迫早産、早産といった産科的なトラブルや、他の病気が隠れている危険なサインである可能性も否定できません。
いつもの腰痛とは違う、何かおかしいと感じた場合は、自己判断で様子を見ずに、すぐにかかりつけの産婦人科へ連絡し、指示を仰ぐことが重要です。
見逃してはいけない危険な腰痛のサインを解説します。
安静にしていても治まらない激しい痛みがある
楽な姿勢で横になったり、安静にしたりしても痛みが全く和らがない、もしくは時間とともにどんどん悪化していくような激しい痛みは、通常の腰痛ではない可能性があります。
このような痛みは、腎盂腎炎や尿路結石、虫垂炎といった、緊急の治療を要する内臓の病気が原因となっていることも考えられます。
また、痛みのあまり冷や汗が出たり、立っていられなくなったりする場合も注意が必要です。
単なる腰痛と片付けずに、すぐに医療機関を受診してください。
産婦人科で問題がないと判断された場合でも、必要に応じて他の診療科を紹介してもらえます。
周期的にお腹の張りや出血を伴う腰痛
腰痛とともに、お腹の張りが周期的に現れる場合は、切迫早産のサインである可能性が考えられます。
特に、生理痛のような鈍い痛みが腰にあり、それに合わせてお腹がキューっと硬くなる感覚が1時間に数回あるようなら、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡が必要です。
また、少量でも性器からの出血を伴う場合も、非常に危険な兆候です。
陣痛につながる子宮収縮が始まっているおそれがあり、迅速な対応が求められます。
このような症状を感じたら、時間帯にかかわらず、ためらわずに病院へ連絡してください。
足のしびれがひどく歩行が困難な場合
お尻から足にかけてのしびれや痛みが非常に強く、動けない、歩けないなど、日常生活に大きな支障が出ている場合も、我慢せずに受診すべきサインです。
これは坐骨神経痛が悪化している状態や、稀に腰椎椎間板ヘルニアなどを発症している可能性も考えられます。
痛みやしびれで思うように体を動かせない状態は、転倒のリスクも高まり非常に危険です。
まずはかかりつけの産婦人科医に症状を詳しく伝え、相談しましょう。
症状に応じて、妊娠中でも治療が受けられる整形外科やペインクリニックなどを紹介してもらえる場合があります。
専門的な治療で症状の緩和が期待できます。
まとめ
妊娠中期の腰痛は、ホルモンの影響や体型の変化など、妊婦特有の生理的な理由で起こることがほとんどです。
日常生活で姿勢を工夫したり、骨盤ベルトを活用したり、適度な運動を取り入れたりすることで、痛みを和らげることは可能です。
しかし、中には安静にしていても治まらない激しい痛みや、周期的にお腹の張りを伴う腰痛など、早急な対応が必要な危険なサインが隠れている場合もあります。
自身の体の変化に注意を払い、いつもと違うと感じたり、不安があったりする際には、一人で抱え込まずにかかりつけの医師や助産師に相談してください。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






