赤ちゃん抱っこによる腱鞘炎の予防と治し方|簡単なストレッチも紹介
赤ちゃんの抱っこで手首や指に痛みを感じる腱鞘炎は、多くの産後ママが経験する悩みの一つです。
この記事では、産後の腱鞘炎の原因から、自分でできる症状のチェック方法、具体的な予防策と痛みを和らげる治し方までを解説します。
痛みがつらい時に役立つ応急処置や、自宅で簡単にできるストレッチも紹介するので、日々のセルフケアに取り入れてみてください。
産後のママが腱鞘炎になりやすい2つの主な理由
産後の身体は、ホルモンバランスの変化と慣れない育児による負担が重なり、腱鞘炎を発症しやすい状態にあります。
特に出産直後から始まる赤ちゃんのお世話は、手首や指に繰り返し負担をかける動作が多く含まれます。
なぜ産後の女性が特に腱鞘炎になりやすいのか、その背景にある主な2つの理由について理解することが、適切なケアへの第一歩となります。
理由1:女性ホルモンの変化で関節がゆるみやすくなる
妊娠から出産にかけて、女性の体内では「プロゲステロン」や「リラキシン」といった女性ホルモンが大量に分泌されます。
これらのホルモンには、出産の際に赤ちゃんが産道を通りやすくするため、骨盤周りの関節や靭帯を緩める働きがあります。
この作用は骨盤だけでなく全身の関節に及び、手首の関節も例外ではありません。
産後、ホルモンバランスが元に戻るまでは関節が緩んだ状態が続くため、この時期に手首へ負担がかかると、腱やその周辺組織を傷つけやすくなり、腱鞘炎の発症リスクが高まります。
理由2:育児による手首や指の使いすぎ
産後は赤ちゃんの抱っこをはじめ、授乳、おむつ替え、沐浴など、これまで経験したことのない動作が続きます。
特に赤ちゃんの頭を支える抱っこでは、親指を広げて手首を曲げた状態が長時間続くため、親指側の腱に大きな負担がかかります。
また、3kg前後で生まれた赤ちゃんは、日に日に体重が増えていくため、手首や指にかかる負荷も増大します。
こうした慣れない動作の繰り返しが、腱と腱鞘との間に摩擦を引き起こし、炎症を発生させる直接的な原因となります。
日々の育児の中で意識的な対策を取り、負担を軽減することが求められます。
これって腱鞘炎?手首や指の痛みでわかる症状セルフチェック
手首や指に痛みや違和感を覚えたとき、それが腱鞘炎なのかどうか気になるかもしれません。
腱鞘炎にはいくつかの種類があり、痛む場所や症状によって見分けることができます。
ここでは、産後の女性に多く見られる代表的な腱鞘炎の症状を紹介します。
セルフチェックで当てはまる項目があれば、早めにケアを始めましょう。
症状が軽い段階であれば、サポーターやテーピングで負担を軽減するのも有効な手段です。
代表的な症状1:親指の付け根が痛む「ドケルバン病」
ドケルバン病は、手首の親指側にある腱鞘とそこを通る腱に炎症が起きる症状で、「狭窄性腱鞘炎」とも呼ばれます。
主な症状として、親指の付け根から手首にかけての痛みや腫れが挙げられ、物をつかんだり、タオルのように物を絞ったりする動作で痛みが強まります。
自分で簡単に確認する方法として「アイヒホッフテスト」があります。
親指を他の4本の指で握り込み、手首を小指側にゆっくり曲げたときに、親指の付け根に鋭い痛みが生じればドケルバン病の可能性があります。
熱感や強い痛みがある場合は、無理に動かさず安静にし、患部を冷やす応急処置が効果的です。
代表的な症状2:指がカクカクする「ばね指」
ばね指は指の付け根部分で腱鞘炎が起こり指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなる症状です。正式には弾発指と呼ばれます。主な症状は指の付け根の痛みや腫れ熱感で特に朝方に症状が強く出ることがあります。
症状が進行すると指を伸ばそうとする際にカクンとばねのような引っかかりを感じるようになります。さらに悪化すると指が曲がったまま自力で伸ばせなくなることもあります。指の使いすぎが原因で腱と腱鞘がこすれて炎症が悪化します。症状が軽度であれば指のストレッチや血行を改善するマッサージが有効な場合もありますが無理に行うと悪化する可能性もあるため注意が必要です。
今日から実践!赤ちゃん抱っこによる腱鞘炎の予防策
腱鞘炎を発症させないためには、日々の生活の中で手首や指への負担を意識的に減らすことが重要です。
特に毎日の抱っこは、少しの工夫で負担を大きく軽減できます。
手首だけでなく腕全体で支えることを意識したり、便利な育児グッズを上手に活用したりすることで、痛みの発生を防ぎます。
ここでは、すぐに取り入れられる腱鞘炎の具体的な予防策を紹介します。
手首への負担を軽くする抱っこのコツ
腱鞘炎を予防するためには、手首を反らせたり、親指を大きく広げたりする抱き方を避けるのが基本です。
赤ちゃんの体を、手首や指先だけでなく、腕全体で面で支えるように意識しましょう。
具体的には、肘を曲げて赤ちゃんを自身の体にしっかりと引き寄せ、前腕に乗せるように抱えると、手首への負担が分散されます。
また、片方の腕だけで長時間抱っこするのではなく、左右の腕で交互に抱く、縦抱きや横抱きなど抱き方を変えるといった工夫も有効です。
抱っこ紐やスリング、授乳クッションなどを積極的に活用し、手で支える時間を物理的に減らすことも、効果的な予防策となります。
サポーターやテーピングを上手に活用する方法
サポーターやテーピングは、手首の関節を固定し、不必要な動きを制限することで腱への負担を軽減する効果があります。
育児や家事などでどうしても手首を使わなければならない時に活用すると、痛みの予防や悪化防止に役立ちます。
サポーターを選ぶ際は、親指から手首までをしっかりと固定できるタイプで、着脱が簡単なものが便利です。
テーピングは、より細かく固定範囲を調整できますが、正しい貼り方が分からない場合は、ドラッグストアの薬剤師や整形外科で相談するとよいでしょう。
ただし、長時間装着し続けると血行不良の原因にもなるため、就寝時や安静にできる時は外すなど、適度な使用を心がけてください。
痛みを感じたら試したい!腱鞘炎の応急処置とセルフケア
もし手首や指に痛みが出てしまった場合、症状を悪化させないための初期対応が重要になります。
痛みを我慢して使い続けると、炎症が長引いたり、症状が慢性化したりする可能性があります。
腱鞘炎の応急処置の基本は、患部を休ませることと、炎症を抑えることです。
ここでは、痛みを感じた時に自分で行える応急処置と、日常生活で取り入れられるセルフケアの方法について解説します。
まずは安静にして手首を休ませることが大切
腱鞘炎の症状を和らげる上で最も重要なのは、原因となっている動作を中断し、患部を安静に保つことです。
痛みは、体からの「使いすぎ」のサインです。
育児中は完全に手を休めるのは難しいかもしれませんが、意識的に痛む方の手を使わないように工夫することが求められます。
例えば、抱っこは痛くない方の手を中心に行う、家族に協力を頼む、抱っこ紐やバウンサーなどを活用するといった方法で、手首への負担を減らす時間を作りましょう。
無理に動かし続けると炎症が悪化し、回復までに時間がかかってしまうため、できる範囲で安静を心がけることが回復への近道となります。
ズキズキ痛む場合はアイシングで炎症を抑える
患部に熱感があったり、ズキズキとした拍動性の痛みがあったりする場合は、炎症が起きているサインです。
このような急性期の症状には、患部を冷やすアイシングが有効です。
アイシングには血管を収縮させ、炎症による腫れや痛みを抑制する効果があります。
方法は、氷を入れたビニール袋や保冷剤などをタオルで包み、1回あたり15分から20分程度、痛む部分に当てます。
直接肌に当てると凍傷の危険があるため、必ず布を一枚挟んでください。
これを1日数回繰り返します。
ただし、痛みが慢性化している場合や、冷やして痛みが増すような場合は、温める方が効果的なこともあるため、症状に応じて対処法を変える必要があります。
【図解】腱鞘炎の痛みを和らげる3つの簡単ストレッチ
腱鞘炎による痛みが少し落ち着いてきたら、硬くなった筋肉や腱をほぐすためのストレッチを取り入れるのが効果的です。
ストレッチには、手首や指周りの血行を促進し、筋肉の柔軟性を高めることで、痛みの緩和と再発予防が期待できます。
ただし、強い痛みがある時に行うと症状を悪化させる可能性があるため、あくまで無理のない範囲で、気持ち良いと感じる程度に行いましょう。
手首の筋肉をゆっくり伸ばすストレッチ
このストレッチは、抱っこなどで酷使されやすい手首の前面と背面の筋肉を伸ばします。
まず、痛みのない方の腕を肩の高さで前にまっすぐ伸ばし、手のひらを上に向けます。
次にもう片方の手で、伸ばした方の手の指先全体をつかみ、ゆっくりと体の方へ引き寄せて手首の前面を20秒ほど伸ばします。
今度は手のひらを下に向け、同じように指先をつかんで手前に引き、手首の背面を20秒ほど伸ばしましょう。
呼吸は止めずに、リラックスした状態で行うのがポイントです。
この一連の動作を左右交互に数回繰り返します。
指の曲げ伸ばしをスムーズにするストレッチ
指の腱の滑りを良くし、こわばりを解消するためのストレッチです。
まず、片方の手の指を、もう片方の手で1本ずつ持ち、ゆっくりと後ろに反らせて10秒ほどキープします。
全ての指で行ったら、今度は手を軽く握る「グー」の形と、指を大きく広げる「パー」の形を交互にゆっくりと繰り返します。
この動きは、指の腱と腱鞘の柔軟性を高め、血行を促進します。
特に、朝起きた時に指が動かしにくいと感じる時に行うと効果的です。
お風呂上がりなど体が温まっている時に行うと、より筋肉が伸びやすくなります。
痛みを感じる場合は、無理に曲げたり伸ばしたりしないように注意してください。
腕の疲れを取る前腕ストレッチ
手首や指の痛みは、腕全体の疲労が原因となっていることも少なくありません。
前腕の筋肉をほぐすことで、手首にかかる負担を間接的に軽減できます。
椅子に座り、テーブルなどの上に腕を置きます。
手のひらは上に向け、リラックスした状態にしてください。
反対の手の親指を使って、肘の内側から手首に向かって、前腕の筋肉をゆっくりと圧をかけながら揉みほぐしていきます。
特に硬いと感じる部分や、押すと気持ち良いと感じる部分を重点的に行うと効果的です。
このマッサージは、抱っこで疲労がたまった腕の血行を改善し、筋肉の緊張を和らげます。
セルフケアで改善しない場合は整形外科の受診を検討しよう
紹介したようなセルフケアやストレッチを試しても、2週間以上痛みが改善しない場合や、むしろ痛みが強くなる、痺れが出てくるなどの症状がある場合は、自己判断で様子を見続けるのは危険です。
症状が悪化し、治療が長引く可能性もあるため、早めに整形外科を受診しましょう。
専門医による正確な診断のもと、現在の症状に合った適切な治療を受けることが、早期回復につながります。
整形外科で受けられる専門的な治療法
整形外科では、まず問診や触診、超音波検査などで症状の原因を特定します。
治療法は症状の程度によって異なりますが、一般的には保存療法から開始されます。
保存療法には、消炎鎮痛剤の含まれた湿布や塗り薬の処方、手首の動きを制限するためのサポーターやシーネ(副木)による固定などがあります。
痛みが強い場合には、炎症を強力に抑えるステロイド注射を行うこともあります。
これらの治療と並行して、超音波や電気刺激などで血行を促進し痛みを和らげる物理療法が行われることもあります。
保存療法で十分な効果が得られない重症のケースでは、腱の通り道を広げる腱鞘切開手術が検討されることもあります。
まとめ
産後の腱鞘炎は、女性ホルモンの影響と、赤ちゃんの抱っこをはじめとする育児による手や手首の酷使が重なることで発症しやすくなります。
予防のためには、腕全体で支える抱っこの仕方を意識し、サポーターや育児グッズを活用して負担を分散させることが有効です。
もし痛みが出てしまった場合は、まず安静にし、熱感があればアイシングを行いましょう。
痛みが和らいだら、無理のない範囲でストレッチを取り入れ、筋肉の柔軟性を保つことも再発防止に役立ちます。
セルフケアを続けても改善が見られない場合は、我慢せずに整形外科を受診し、専門的な診断と治療を受けることを検討してください。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






