逆子の帝王切開はいつ決まる?決定時期の目安や流れを解説
妊娠後期に逆子の場合、出産方法として予定帝王切開が検討されます。
いつから帝王切開の準備が始まるのか、どのような流れで進むのか、不安に感じる方も少なくありません。
逆子の帝王切開は、一般的に赤ちゃんの位置が固定される妊娠34週以降に最終的な判断が下されます。
この記事では、帝王切開が決まる時期の目安から、具体的な手術の流れ、術後の経過や費用までを詳しく解説します。
逆子の帝王切開が決まるのは妊娠34〜35週頃が目安
逆子の帝王切開について最終的な判断が下されるのは、一般的に妊娠34〜35週頃が多いとされています。妊娠中期までは赤ちゃんが子宮内で活発に動き回るため、逆子の状態でも心配ないとされていますが、妊娠後期に入ると赤ちゃんの成長に伴い子宮内のスペースが限られてきます。しかし、妊娠35週を過ぎても逆子が自然に治る可能性は残っており、妊娠36週では95%以上の赤ちゃんが逆子ではなくなるという報告もあります。実際に、妊娠36週の時点で逆子と診断されても、分娩時までに自然に頭位に戻るケースも6~7%程度あるとされています。
医師は妊婦健診で超音波検査などを用いて赤ちゃんの位置を最終確認し、帝王切開の方針を決定し、手術日の調整を進めていきます。帝王切開の手術日は、出産予定日の1〜2週間前の妊娠38〜39週頃に設定されることが多いです。
そもそも逆子(骨盤位)とは?
妊娠後期に入ると、多くの妊婦が「逆子」という言葉を耳にするようになります。
逆子とは、医学的には「骨盤位」と呼ばれ、お腹の赤ちゃんの頭が本来あるべき子宮の下側ではなく、上側を向いている状態を指します。
出産が近づくにつれて自然に頭が下を向くことが多いですが、そのままの位置でいることもあります。
逆子にはいくつかの種類があり、原因が特定できないケースも少なくありません。
お腹の赤ちゃんの頭が上を向いている状態のこと
逆子とは、医学的には骨盤位と呼ばれ、お腹の赤ちゃんの頭が子宮の上部にあり、お尻や足が下(産道側)を向いている状態を指します。
妊娠中期頃までは、赤ちゃんは子宮の中を自由に動き回っているため、逆子の状態であることは珍しくありません。
しかし、出産予定日が近づくにつれて、ほとんどの赤ちゃんは自然に回転し、頭が下にある「頭位」という出産に適した体勢に落ち着きます。
一般的に、妊娠28週を過ぎても頭が上にある状態が続く場合に、逆子と診断されることがあります。
逆子には「殿位」「膝位」「足位」の3種類がある
逆子は、赤ちゃんのお尻や足の位置によって主に3つの種類に分類されます。
最も多いのが「殿位(でんい)」で、赤ちゃんがお尻を下に向け、体育座りのように膝を曲げているか、足を伸ばしている状態です。
次いで、膝を立てて正座のような姿勢をとる「膝位(しつい)」、そして足がまっすぐ下に伸びて立っているような姿勢の「足位(そくい)」があります。
足位は、経腟分娩を試みた場合に足やへその緒が先に出てきやすいなど、特にリスクが高いとされています。
どの種類の逆子であるかによって、分娩方法の選択にも影響を与えます。
逆子になる原因は特定できないことが多い
逆子になる明確な原因は、実はまだ完全には解明されていません。
しかし、いくつかの要因が関係している可能性が指摘されています。
例えば、子宮筋腫や子宮の形の異常、前置胎盤などで子宮内のスペースが狭かったり、赤ちゃんが回転しにくかったりする場合です。
また、羊水が多すぎて赤ちゃんが動きすぎてしまう「羊水過多」や、逆に羊水が少なくて動きが制限される「羊水過少」も原因の一つとして考えられます。
ただし、これらの要因に当てはまらない妊婦も多く、原因不明のまま逆子になるケースがほとんどです。
逆子の出産方法は帝王切開が基本
逆子と診断された場合、現在の産科医療では、母体と赤ちゃんの安全を最優先に考え、予定帝王切開による出産が第一選択肢となります。
逆子のまま経腟分娩を行うことには特有のリスクが伴うためです。
計画的に安全なタイミングで手術を行う帝王切開には、分娩時の偶発的なトラブルを回避できるという大きなメリットがあります。
ここでは、なぜ帝王切開が基本とされるのか、その理由を詳しく見ていきます。
安全を最優先に考え帝王切開が選択される
逆子の出産で帝王切開が基本となる最大の理由は、母体と赤ちゃんの安全を確保するためです。
逆子のまま経腟分娩を行うと、体の中で最も大きい頭が最後に産道を通ることになります。
このとき、へその緒が赤ちゃんの体と産道に挟まれて圧迫され、赤ちゃんに酸素が届きにくくなる「臍帯圧迫」や、頭が産道に引っかかってしまう「頭部娩出困難」といったリスクが生じます。
これらの事態は、赤ちゃんの脳に深刻なダメージを与えかねません。
予定帝王切開は、こうした分娩時の突発的なトラブルを計画的に回避し、安全に出産を終えるための最適な方法として選択されます。
逆子のまま経腟分娩を行う場合のリスク
手術に対して抵抗があり、帝王切開は嫌だと感じる方もいるかもしれません。
しかし、逆子のまま経腟分娩に臨むことには、いくつかの重大なリスクが伴います。
最も危険なのが「臍帯脱出」で、破水した際にへその緒が赤ちゃんより先に子宮口から出てしまい、圧迫されて胎児が極度の低酸素状態に陥る可能性があります。
また、お尻や足が出た後に頭が引っかかってしまい、分娩に時間がかかることもあります。
これらのリスクは予測が難しく、緊急事態につながる恐れがあるため、多くの医療機関では逆子の経腟分娩を推奨していません。
妊娠後期に逆子が治る可能性はある?
妊娠後期に逆子と診断されても、すぐに出産方法が確定するわけではありません。
出産が近づくにつれて自然に赤ちゃんの位置が戻ることもありますし、医療的な介入によって改善を試みる方法も存在します。
ここでは、逆子が治る可能性や、そのために行われることがある「外回転術」、そして一般的に知られている「逆子体操」の効果について解説します。
妊娠30週前半までは自然に正しい位置に戻ることも
妊娠28週頃では約3割の胎児が逆子ですが、妊娠34週頃になるとその割合は5%程度まで減少します。
これは、多くの赤ちゃんが出産に向けて自然に頭を下に回転させるためです。
特に妊娠30週前半までは、まだ子宮内に赤ちゃんが動けるスペースが残っているため、自然に頭位に戻る可能性は十分にあります。
そのため、この時期に逆子と診断されても過度に心配する必要はありません。
医師は定期的な健診で赤ちゃんの位置を確認しながら、自然に治るのを待つのが一般的です。
週数が進むにつれて可能性は低くなりますが、出産直前に治るケースも稀にあります。
医師がお腹の上から胎児を回す「外回転術」という方法
自然に逆子が治らない場合、医師が妊婦のお腹の上から手で胎児をゆっくりと回転させる「外回転術(ECV)」という方法が検討されることがあります。
この施術は通常、妊娠36週以降に、入院設備のある病院で行われます。
成功率は施設によって異なりますが、約50~60%とされています。
ただし、施術中に胎盤が剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」や破水、胎児の心拍に異常が起こるなどのリスクも伴います。
そのため、安全に実施できる妊婦や胎児の条件は限られており、すべての医療機関で行われているわけではありません。
希望する場合は、まずかかりつけの医師に相談が必要です。
逆子体操の効果は医学的に証明されていない
逆子を治す方法として、「逆子体操」を聞いたことがあるかもしれません。
代表的なものに、うつ伏せになってお尻を高く持ち上げる「胸膝位」などがあります。
産院によっては指導されることもありますが、逆子体操が逆子の改善に有効であるという明確な医学的根拠は、現在のところ確立されていません。
自己判断で無理に行うと、お腹の張りや気分の不快感につながることもあります。
もし逆子体操を試してみたい場合は、必ず事前に行っても良いか、どのような方法が良いかをかかりつけの医師や助産師に確認し、指導のもとで安全に行うようにしてください。
予定帝王切開の具体的な流れを解説
逆子が治らず予定帝王切開が決まった場合、手術は陣痛や破水が起こる前の、正期産に入る妊娠37週から38週頃に設定されるのが一般的です。
これは、自然な陣痛が始まる予定日よりも少し早いタイミングです。
手術が決まると、入院から退院までのスケジュールが組まれます。
ここでは、手術前日の準備から当日の手術の流れまで、具体的な経過を解説し、安心してその日を迎えられるようにします。
手術前日に入院して準備を行う
予定帝王切開の場合、手術の前日に入院するのが一般的です。
入院後は、手術の流れやリスクに関する最終的な説明を受け、同意書にサインをします。
血液検査や胎児心拍モニタリングなどの術前検査が行われ、母子ともに手術に耐えられる状態かを確認します。
麻酔科医による診察もあり、麻酔の方法や副作用について詳しい説明を受けます。
感染予防のためにシャワーを浴び、手術部位の剃毛を行うこともあります。
夕食後は、麻酔による嘔吐を防ぐために指定された時間から飲食が禁止(絶飲食)となり、当日に備えて早めに就寝します。
手術当日の流れと手術にかかる時間
手術当日は、朝から点滴が開始され、手術着に着替えて手術室へ向かいます。
手術室では、まず背中に痛み止めの管を入れ、脊椎くも膜下麻酔や硬膜外麻酔といった局所麻酔を行います。
麻酔が効いて下半身の感覚がなくなったら、お腹の消毒をし、手術が開始されます。
お腹の皮膚を切開してから赤ちゃんが誕生するまでの時間は非常に短く、通常は5分から10分程度です。
赤ちゃん誕生後は、胎盤を取り出し、子宮やお腹の切開部を縫合していきます。
手術全体にかかる時間は、1時間前後が目安です。
麻酔は局所的なので、意識ははっきりしており、赤ちゃんの産声を聞くことができます。
帝王切開に関するよくある質問
帝王切開が決まると、手術そのものだけでなく、術後の生活についても多くの疑問や不安が浮かぶものです。
特に、手術後の痛みはどのくらい続くのか、入院期間はどれくらいか、そして費用はどの程度かかるのかといった点は、多くの人が気になるところです。
ここでは、帝王切開に関してよく寄せられる質問に答え、手術後の見通しを立てるための情報を提供します。
手術後の痛みはいつまで続く?
帝王切開の手術後は麻酔が切れると切開した傷の痛みと子宮が収縮する後陣痛が起こります。
痛みは手術当日と翌日がピークでこの期間は痛み止めの点滴や内服薬を使ってコントロールします。
多くの病院では回復を促すために手術の翌日から歩行訓練が始まります。
体を動かすことで痛みを感じることもありますが徐々に回復に向かいます。
強い痛みは術後2〜3日で落ち着きその後は日に日に和らいでいくのが一般的です。
入院期間は産後の経過によりますが通常7〜10日程度で退院後もしばらくは無理をせず過ごす必要があります。
費用はどのくらい?公的制度や保険は使える?
逆子などを理由とする帝王切開は、病気やケガの治療と同様に医療行為とみなされるため、健康保険が適用されます。
手術料、入院料、投薬料などが保険診療の対象となり、自己負担は原則3割です。
それでも出産費用は高額になりがちですが、「高額療養費制度」を利用すれば、1ヶ月の医療費の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻されます。
また、民間の医療保険に加入している場合は、契約内容に応じて手術給付金や入院給付金を受け取れることが多いです。
事前に加入している保険会社に連絡し、給付の対象となるか確認しておくことをお勧めします。
まとめ
逆子による予定帝王切開は、妊娠34〜35週頃に最終的な判断が下されるのが一般的です。
これは、母体と赤ちゃんの安全を最優先に考えた上での選択となります。
妊娠後期でも自然に逆子が治る可能性や、外回転術という選択肢も存在しますが、最終的に帝王切開での出産が決まった場合、その具体的な流れや術後の経過をあらかじめ知っておくことが、不安の軽減につながります。
帝王切開は、安全な出産のための有効な手段の一つです。
不明な点や心配なことがあれば、一人で抱え込まず、かかりつけの医師や助産師に相談してください。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






