産褥期はいつまで?産後の過ごし方や体の変化、悪露について解説
産褥期がいつからいつまで続くのか、多くの人が疑問に思うかもしれません。
一般的に産後6〜8週間を指すこの期間は、出産による体の変化が妊娠前の状態に戻るための大切な時間です。
この時期の過ごし方は、その後の心身の回復に大きく影響します。
産褥期の過ごし方を正しく理解し、後陣痛やホルモンバランスの乱れといった体の変化、そして悪露の状態など、産褥期特有の事象に適切に対処することが重要です。
ここでは、産後の体をケアし、穏やかに過ごすための具体的な情報を提供します。
産褥期とは?出産で変化した体が妊娠前の状態に戻るまでの期間
産褥期とは、出産を終えた後の体が妊娠前の状態に回復していく期間を指します。
具体的には、出産直後から産後6~8週間頃までの期間が目安です。
この間に、ホルモンバランスの変化とともに、赤ちゃんを育むために大きくなった子宮が元の大きさに戻る「子宮復古」をはじめ、体の各機能が徐々に妊娠前の状態へと戻っていきます。
産褥期の終わりは、約10ヶ月かけて変化した体が回復する一つの区切りとされていますが、心身の回復には個人差があるため、無理をせずに過ごすことが大切です。
産褥期に起こりやすい体と心の変化
産褥期は、出産による体のダメージと急激なホルモンバランスの変化により、心身にさまざまな不調やトラブルが現れやすい時期です。
後陣痛や会陰の傷の痛みといった身体的な苦痛に加え、気分の落ち込みや漠然とした不安など、精神的に不安定になることも少なくありません。
こうした状態は「マタニティブルーズ」と呼ばれ多くの人が経験しますが、症状が長引く場合は「産後うつ」の可能性も考えられるため、一人で抱え込まずに周囲や専門家へ相談することが重要です。
子宮が元の大きさに戻る際の痛み(後陣痛)
後陣痛とは、出産で大きく膨らんだ子宮が、元の大きさに収縮する過程で生じる痛みのことです。
この痛みは産後2〜3日頃をピークに、数日間続くのが一般的です。
特に、子宮の収縮を促すオキシトシンというホルモンが分泌される授乳時に、痛みを強く感じることがあります。
後陣痛の痛みは、初産婦よりも子宮の戻りが早い経産婦の方が強く感じる傾向にあります。
痛みが日常生活に支障をきたすほどつらい場合は、我慢せずに医療スタッフに相談し、痛み止めを処方してもらうなどの対処を検討しましょう。
会陰切開や帝王切開による傷の痛み
出産時には、会陰切開や分娩時にできた裂傷、あるいは帝王切開による手術の傷が残ります。
これらの傷の痛みは産褥期の大きな悩みの一つで、特に産後数日間は座ったり歩いたりするのもつらく感じることがあります。
痛みが強い場合は、鎮痛剤を使用したり、円座クッションを活用して患部への圧迫を避けたりすると和らぐことがあります。
傷の回復には個人差がありますが、痛みが長引く場合や、赤み、腫れ、熱感など感染を疑う症状が見られる場合は、速やかに医師の診察を受ける必要があります。
ホルモンバランスの急激な変化による気分の浮き沈み
出産を終えると、妊娠中に分泌量が増加していたエストロゲンなどの女性ホルモンが急激に減少します。
このホルモンバランスの急激な変化は自律神経の乱れを引き起こし、精神的に不安定な状態を招きやすくなります。
理由もなく涙が出たり、些細なことでイライラしたり、気分が落ち込んだりするのはこのためで、「マタニティブルーズ」と呼ばれます。
多くの場合は産後数週間で自然に落ち着きますが、症状がつらいと感じる期間が長引く場合は、一人で抱え込まず、家族やパートナー、医療機関に相談することが大切です。
便秘や痔の悩み
産後は便秘や痔のトラブルに悩まされることが少なくありません。
その原因は、会陰切開の傷の痛みでいきむのが怖くなることや、ホルモンバランスの変化による腸の働きの低下、慣れない育児による水分不足や運動不足などが挙げられます。
便秘を予防・改善するためには、意識的に水分を多く摂取し、食物繊維が豊富な食事を心がけることが基本です。
また、体調を見ながら軽い散歩などで体を動かすことも効果的です。
症状が改善しない場合は、授乳中でも服用できる薬を処方してもらえるため、医師に相談してください。
腰痛や骨盤のゆるみ
妊娠中から出産にかけて、骨盤は赤ちゃんが通りやすいようにホルモンの影響で緩みます。
産後、この緩んだ骨盤は徐々に戻っていきますが、その過程で骨盤が不安定な状態になり、腰に負担がかかりやすくなるため腰痛が起こりやすくなります。
また、慣れない姿勢での授乳や抱っこも腰痛を悪化させる一因です。
対策としては、授乳クッションなどを活用して正しい姿勢を保つことや、骨盤ベルトを着用して骨盤をサポートすることが有効です。
無理のない範囲で骨盤周りのストレッチを取り入れるのも良いでしょう。
抜け毛の増加や肌質の変化
産後3ヶ月頃から、抜け毛の多さに驚くことがあります。
これは「産後脱毛症」と呼ばれ、妊娠中に女性ホルモンの影響で抜けにくくなっていた髪の毛が、産後のホルモンバランスの変化によって一気に抜け落ちる生理的な現象です。
通常は産後半年から1年ほどで自然に落ち着き、新しい髪が生えてきます。
また、ホルモンバランスの乱れや睡眠不足、ストレスなどから、肌が乾燥したり、シミやニキビができやすくなったりと、肌質の変化を感じることもあります。
バランスの良い食事と十分な休息を心がけ、保湿ケアを丁寧に行いましょう。
【時期別】産褥期の過ごし方の目安
産褥期の過ごし方は、体の回復段階に応じて目安があります。
出産という大仕事を終えた体は、すぐには元の状態に戻りません。
まずは体を休めることを最優先し、時期ごとに活動範囲を少しずつ広げていくことが、順調な回復につながります。
赤ちゃん中心の新しい生活に慣れながら、自分の体調と向き合うことが大切です。
特に、母乳育児の場合は赤ちゃんのためにも、バランスの取れた栄養をしっかりと摂取することを心がけましょう。
ここでは、時期ごとの過ごし方のポイントを解説します。
産後〜2週間:とにかく安静にして体を回復させる
出産直後から約6~8週間は「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれ、妊娠・出産によって変化した体が妊娠前の状態に戻るための大切な期間です。特に産後2週間は、体の回復に最も専念すべき期間とされています。
産後2日目、4日目、5日目といった入院中は、医療スタッフの管理のもとで過ごしますが、退院後も安静第一の生活を心がけてください。
特に退院後の1週間、2週間は、家事などは家族やパートナーに任せ、赤ちゃんのお世話と自分の食事、トイレ以外は極力横になって過ごすことが理想です。 この時期に無理をすると、後の回復が遅れたり、育児に必要な体力を補えなかったりと、心身に支障が出る可能性があるため、周囲のサポートを積極的に受け入れ、体を休めることに集中しましょう。
産後3〜4週間:体調を見ながら少しずつ家事を再開する
産後3週間から1ヶ月検診までの時期は、少しずつ体力が回復し、動けるようになってきます。
「床上げ」の目安とされるこの時期からは、体調を見ながら無理のない範囲で簡単な家事を再開しても良いでしょう。
ただし、まだ体は回復途上にあるため、長時間の立ち仕事や重いものを持つ作業は避けるべきです。
あくまでも自分の体調を優先し、疲れを感じたらすぐに休むことが重要です。
この時期は、少しずつ日常生活のリズムを取り戻していくための準備期間と捉え、焦らずゆっくりと過ごしてください。
産後5〜8週間:無理のない範囲で外出も可能になる
産後1ヶ月検診で医師から順調な回復が確認されれば、少しずつ外出も可能になります。
産後6週目頃には体もかなり元気になってきますが、まだ完全に回復したわけではありません。
外出は近所の散歩など、短時間で無理のない範囲から始めましょう。
人混みは避け、自分の体調に変化がないか注意深く観察することが大切です。
心身ともにリフレッシュできる良い機会ですが、無理は禁物です。
本格的な運動や長時間の外出は、産褥期が終わる産後8週以降に計画するのが賢明です。
仕事への復帰は産後8週間以降が原則
労働基準法では、母体を保護するため、産後8週間を経過しない女性を就業させることを原則として禁止しています。
ただし、本人が希望し、医師が支障ないと認めた業務については、産後6週間から復帰が可能です。
この規定は、出産による身体的ダメージからの回復を目的としています。
体の回復スピードには個人差が大きく、8週間経っても本調子でないことも少なくありません。
仕事への復帰を考える際は、法律上の期間だけでなく、自身の体調を最優先に考慮し、医師や職場とよく相談して無理のない計画を立てることが重要です。
「悪露(おろ)」はいつまで続く?色や量の変化を解説
悪露とは、出産後の子宮から排出される血液やリンパ液、剥がれ落ちた内膜などが混じった分泌物のことです。
これは、胎盤が剥がれた後の子宮内膜が再生・回復していく過程で起こる正常な現象であり、その色や量の変化は子宮の回復具合を知るためのバロメーターとなります。
悪露は通常、産後1ヶ月程度でほとんどなくなりますが、期間や状態には個人差があります。
ここでは悪露の変化の目安や、期間中のケア方法、注意すべき症状について解説します。
悪露の色と量の変化の目安
悪露は子宮の回復とともに色や量が変化します。
産後3〜4日は、胎盤が剥がれた部分からの出血が主なため、血液が多く含まれた赤色の「赤色悪露」が出ます。
その後、産後1週間頃には量は徐々に減少し、血液の成分が少なくなって褐色の「褐色悪露」に変わります。
産後3〜4週間頃になると、さらに色は薄まり黄色っぽい「黄色悪露」となり、最終的にはクリーム色のような「白色悪露」へと変化し、産後4〜6週間でほとんど見られなくなるのが一般的な経過です。
この色の変化が順調な子宮復古の目安となります。
悪露が出ている期間のケア方法
悪露が出ている間は子宮口が開いているため細菌に感染しやすい状態にあります
そのためデリケートゾーンを清潔に保つケアが非常に重要です
産褥用ナプキンや生理用ナプキンを使用し汚れたらこまめに交換することを心がけましょう
特にトイレの後は洗浄機能付きトイレや清浄綿陰部洗浄用のボトルなどを使い前から後ろに向かって優しく洗い流すか拭き取ります
入浴は1ヶ月検診で許可が出るまではシャワーで済ませ湯船に浸かるのは避けることで感染リスクを低減できます
こんな症状は注意!病院に相談すべき悪露の状態
悪露の状態は子宮の回復を知るための重要なサインですが、中には注意が必要なケースもあります。
例えば、一度量が減ったはずの悪露が再び鮮血になったり、レバーのような大きな血の塊が頻繁に出たりする場合は、子宮の回復に何らかの問題が起きている可能性があります。
また、悪露から生臭いような強い悪臭がする場合も、細菌感染のリスクが考えられます。
出血量が非常に多く、めまいや立ちくらみといった貧血症状を伴う場合は特に危険なため、すぐに医療機関に連絡し、指示を仰ぐ必要があります。
産褥期によくある疑問を解消
産褥期は安静に過ごすことが第一とされますが、初めての経験では具体的な生活の仕方に戸惑うことも多いでしょう。
「赤ちゃんのお世話以外は寝て過ごすように」と言われても、動けない時間が長く暇に感じたり、さまざまな疑問が浮かんだりするかもしれません。
しかし、体は出産という大仕事の回復過程にあります。
ここでは、産褥期の入浴はいつから可能なのか、里帰りしないで過ごすための工夫など、多くの人が抱きがちな疑問について解説し、安心して産褥期を過ごすためのヒントを提供します。
産褥期の入浴はいつから大丈夫?
産後の入浴については、感染症予防の観点から注意が必要です。
シャワーであれば、出産後の経過に異常がなく、体力が回復していれば、医師の許可のもと退院後すぐに浴びることが可能です。
しかし、湯船に浸かるのは、子宮口が完全に閉じて悪露が出なくなるまで待つのが一般的です。
通常は、産後1ヶ月検診で医師の診察を受け、子宮の回復が順調であることが確認されてから許可が出ます。
それまでは、細菌感染のリスクを避けるためにも、体を温めたい場合は足湯にするなど工夫し、湯船での入浴は控えましょう。
里帰りしないで過ごすための3つの工夫
様々な事情で里帰りを選択しない場合、事前の準備が産褥期を乗り切る鍵となります。
第一に、家事や育児の負担を減らすため、ネットスーパーや食事の宅配サービス、家事代行サービスなどを積極的に活用する計画を立てておきましょう。
第二に、最も身近なサポーターであるパートナーとの協力体制を、妊娠中から具体的に話し合っておくことが不可欠です。
家事分担や育児の役割について明確にしておくとスムーズです。
第三に、地域の産後ケア施設やファミリーサポート、自治体の支援サービスなどを事前に調べておき、いざという時に頼れる先を確保しておくことも安心につながります。
まとめ
産褥期は、出産によって変化した心身を妊娠前の状態へと回復させるための極めて重要な期間です。
この時期の過ごし方は、その後の長期的な健康に大きな影響を与える可能性があります。
周囲のサポートを積極的に受け入れ、自分の体を休めることを最優先にしてください。
昔から「産後は目を使いすぎない方が良い」と言われるように、スマートフォンの長時間の使用なども控え、心身をリラックスさせることが回復を助けます。
決して無理をせず、赤ちゃんと自分自身のペースを大切にしながら、新しい生活のスタートを切りましょう。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






