妊娠中に耳が詰まる原因は耳管開放症?すぐできる対処法と治る時期

妊娠中に耳が詰まる、自分の声が響くといった不快な症状に悩む妊婦は少なくありません。
特に妊娠中期以降に症状が現れやすく、その多くは「耳管開放症(じかんかいほうしょう)」が原因と考えられています。
この症状は一時的なものがほとんどですが、原因や対処法を知ることで不安を和らげられます。
この記事では、妊娠中に起こる耳の詰まりの正体や症状、自分でできるセルフケア、そしていつまで続くのかについて解説します。
妊娠中に耳が詰まる不快感、その原因は「耳管開放症」かも
妊娠中に感じる耳の詰まりやこもるような感覚の主な原因として、「耳管開放症」という状態が考えられます。
耳管とは、鼻の奥と中耳をつなぐ管で、普段は閉じており、あくびや唾を飲み込むときにだけ開いて中耳の圧力を調整しています。
しかし、耳管開放症になると、この耳管が常に開いたままの状態になってしまいます。
そのため、自分の声や呼吸音が直接鼓膜に響いたり、耳が詰まったような不快な症状が続いたりするのです。
耳の詰まりだけじゃない!耳管開放症の具体的な症状
耳管開放症の症状は、単に耳が詰まった感じがするだけではありません。
耳がこもるような閉塞感に加えて、自分の声が頭の中で響いたり、呼吸音が大きく聞こえたりといった特有の症状が現れます。
これらの不快な症状は、耳管が開いたままになることで、通常は伝わらないはずの音が直接鼓膜に届いてしまうために起こります。
人によっては、めまいやふらつきを伴うこともあり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
自分の声が頭の中で大きく響く
耳管開放症の代表的な症状の一つが「自声強聴(じせいきょうちょう)」です。
これは、自分の声が頭蓋骨を通して直接耳に伝わり、まるで頭の中で大きく響いているように感じる状態を指します。
声の大きさをうまく調節できなくなり、無意識に小さな声で話すようになることも特徴です。
また、電話や会話がしづらくなるなど、コミュニケーションに不便を感じる人も少なくありません。
この症状は、開いたままの耳管を通して、鼻や口からの音が直接中耳に届いてしまうために発生します。
自分の呼吸音がうるさく聞こえる
呼吸音聴取も、耳管開放症によく見られる症状です。
自分の「スー、ハー」という呼吸音が、まるでマイクを口元に近づけたかのように、耳元で大きく聞こえてしまいます。
特に、静かな場所にいるときや、集中しようとしているときにこの音が気になりやすく、大きなストレスを感じる原因となります。
この症状も自声強聴と同様に、開いている耳管を通して呼吸に伴う空気が鼓膜を直接振動させることで起こります。
不快感から、つい鼻をすするなどの癖が出てしまうこともあります。
耳がボーッとする閉塞感がある
「耳閉感(じへいかん)」と呼ばれる、耳がボーッとする、水が入ったような詰まった感じが続く症状も特徴的です。
通常、耳管は開閉することで外部の気圧と中耳の気圧を一定に保つ役割を担っています。
しかし、耳管が開きっぱなしになるとこの圧力調整機能がうまく働かなくなり、鼓膜が正常に振動しにくくなります。
その結果、飛行機に乗った時やトンネルに入った時のような、耳が塞がれたような感覚が持続的に生じます。
耳抜きを試みても、すでに耳管が開いているため効果がなく、かえって症状が悪化することもあります。
めまいやふらつきを感じることもある
耳は音を聞くだけでなく、体のバランスを保つ平衡感覚を司る重要な器官です。
そのため、耳管の異常が内耳にある三半規管などに影響を及ぼし、めまいやふらつきを引き起こすことがあります。
耳の閉塞感や自声強聴といった症状に加えて、体がぐらつくような感覚や、立ちくらみに似た症状が現れた場合は注意が必要です。
ただし、妊娠中は貧血や起立性低血圧、自律神経の乱れなど、他の原因でもめまいは起こりやすくなっています。
症状が頻繁に起こる場合や、日常生活に支障が出るほど強い場合は、他の病気の可能性も考えて早めに医師に相談してください。
妊娠中に耳管開放症が起こりやすい2つの理由
なぜ妊娠中に限って耳管開放症になりやすいのでしょうか。
その背景には、妊娠期特有の劇的な体の変化が関係しています。
特に、女性ホルモンのバランスが大きく変動することと、つわりなどによる体重や体内の水分量の変化が、耳管の機能に直接的な影響を与えると考えられています。
ここでは、妊娠中に耳管開放症が起こりやすくなる主な2つの理由について、具体的に解説します。
ホルモンバランスの変化による血流への影響
妊娠中は、プロゲステロン(黄体ホルモン)やエストロゲン(卵胞ホルモン)といった女性ホルモンの分泌量が急激に増加します。
これらのホルモンには、体内の水分バランスを調整したり、血管の筋肉を緩めたりする働きがあります。
この作用が耳管周辺の血流にも影響を及ぼし、耳管を閉じる役割を担う組織のむくみを減少させることがあります。
その結果、通常はぴったりと閉じているはずの耳管に隙間ができてしまい、開きやすい状態になると考えられています。
これは、月経前に同様の症状を経験する女性がいることからも、ホルモンバランスの影響が大きいことを示唆しています。
つわりによる体重減少や水分不足
妊娠初期のつわりによって食事が十分に摂れず、体重が急激に減少することも耳管開放症の引き金になります。
耳管の周囲には、管が常に開いた状態にならないように、クッションの役割を果たす脂肪組織が存在します。
しかし、急な体重減少によって全身の脂肪とともにこの部分の脂肪も減ってしまうと、物理的に耳管が閉じにくくなり、開放状態に陥りやすくなります。
また、嘔吐や食欲不振によって体内の水分が不足する脱水状態も、血流を悪化させ、耳管周辺の組織の状態に影響を与えるため、症状を誘発したり悪化させたりする一因となります。
つらい症状を和らげる!妊娠中でもできる4つのセルフケア
妊娠中は薬の服用に慎重になるため、つらい症状が出てもどう対処すればよいか悩むかもしれません。
しかし、耳管開放症の不快な症状は、生活の中のちょっとした工夫で和らげることが可能です。
薬に頼らなくても実践できる安全な対処法を知っておけば、症状が出たときに落ち着いて対応できます。
ここでは、妊娠中でも安心して試せる4つのセルフケアを紹介します。
症状を感じたときに、ぜひ試してみてください。
【即効性あり】前屈したり横になったりして頭に血を集める
症状が特につらいときに、すぐに効果を実感しやすい対処法が、頭の位置を心臓より低くする姿勢をとることです。
具体的には、椅子に座って深くお辞儀をするように前屈したり、しばらくの間横になったりします。
こうすることで頭部への血流が一時的に増加し、耳管周辺の組織がうっ血してむくむため、開きっぱなしになっていた耳管が閉じやすくなります。
数分間この姿勢を保つだけで、自分の声の響きや耳の閉塞感がすっと楽になることがあります。
仕事中や外出先で症状が出たときにも試しやすい、即効性のある方法です。
こまめな水分補給で脱水を防ぐ
体内の水分が不足すると血液の流れが悪くなり、耳管開放症の症状を悪化させる一因となります。
妊娠中は、つわりで水分が失われがちになる上、基礎代謝が上がって汗をかきやすくなるため、普段以上に脱水に注意が必要です。
カフェインの含まれていない水や麦茶、ルイボスティーなどを、一度にたくさん飲むのではなく、一日を通してこまめに摂取する習慣をつけましょう。
体を内側から潤すことは、耳管周辺の組織を正常な状態に保つためにも役立ちます。
特に、朝起きたときや入浴後など、水分が失われやすいタイミングでの補給を忘れないようにしてください。
体を締め付けないゆったりとした服装を心がける
体を強く締め付ける服装は、全身の血行を妨げる原因となります。
血流が悪くなることは、耳管周辺の血流にも影響し、症状を悪化させる可能性があります。
特に、腹部を圧迫するようなデザインの服や、きつい下着は避け、マタニティ用の衣類やゆったりとしたシルエットのワンピースなどを選ぶとよいでしょう。
リラックスできる服装で過ごすことは、血行促進だけでなく、ストレスの軽減にもつながります。
妊娠期間中は、お腹の赤ちゃんのためにも、そして自身の不快な症状を和らげるためにも、体を締め付けない服装を心がけることが大切です。
医師に相談の上で漢方薬(加味帰脾湯など)を服用する
セルフケアだけでは症状が改善しない場合、漢方薬の服用が選択肢になることもあります。
耳管開放症の治療には、体に潤いを与えて血行を促進する「加味帰脾湯(かみきひとう)」や、体内の水分バランスを整える「五苓散(ごれいさん)」などが用いられることがあります。
これらは比較的、妊娠中でも処方されやすい漢方薬ですが、自己判断での服用は絶対に避けてください。
必ず、かかりつけの産婦人科医や耳鼻咽喉科医に相談し、診断を受けた上で処方してもらうようにしましょう。
医師は、母体と胎児への安全性を最優先に考慮して、適切な薬を選択してくれます。
「いつまで続くの?」耳管開放症が治る時期の目安
不快な症状が続くと、「このつらさは一体いつまで続くのだろう」と不安に感じるのは当然のことです。
特に、終わりが見えないと精神的なストレスも大きくなります。
しかし、妊娠中に発症した耳管開放症は、その多くが一時的なものであり、永続的に続くわけではありません。
ほとんどの場合、出産という大きな体の変化を境に、症状は自然に解消に向かっていきます。
ここでは、症状が治まる時期の目安について解説します。
ほとんどの場合、産後には自然に症状が改善する
妊娠中に始まった耳管開放症の症状は、多くの場合、出産を終えると自然に軽快し、治っていきます。
これは、症状の主な原因であったホルモンバランスが出産後に妊娠前の状態に戻ることや、つわりによる体重減少や水分不足が解消されることが大きく関係しています。
個人差はありますが、産後数週間から数ヶ月のうちに、気付いたら症状がなくなっていたというケースがほとんどです。
そのため、現在症状に悩まされているとしても、過度に心配する必要はありません。
多くは一過性のものと理解し、上手にセルフケアを取り入れながら、この時期を乗り越えていきましょう。
セルフケアで改善しないときは何科を受診すべき?
紹介したセルフケアを試しても症状が良くならない場合や、耳の詰まりや自分の声が響く感覚がひどく、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
我慢しすぎるとストレスが溜まり、母体にとっても良くありません。
また、耳管開放症以外の病気が隠れている可能性もゼロではないため、専門家による正確な診断を受けることが大切です。
その際、どの診療科を受診すればよいか迷うかもしれません。
まずは産婦人科か耳鼻咽喉科の医師に相談しよう
妊娠中の体の不調については、まず、かかりつけの産婦人科医に相談するのが最もスムーズです。
妊婦健診の際に、いつからどのような症状があるのかを具体的に伝えましょう。
産婦人科医は妊娠中の体の変化について熟知しており、適切なアドバイスをくれたり、必要に応じて専門の診療科を紹介してくれたりします。
耳の症状が特に強い場合や、より専門的な診察を希望する場合は、直接耳鼻咽喉科を受診することも可能です。
その際は、必ず受付や問診で「妊娠中であること」と「妊娠週数」を正確に伝えてください。
そうすることで、妊娠中でも安全な検査や治療を考慮してもらえます。
妊娠中の耳の詰まりに関するよくある質問
ここまで妊娠中の耳の詰まりの原因や対処法について解説してきましたが、まだいくつか疑問が残っているかもしれません。
特に、耳抜きとの関係や、お腹の赤ちゃんへの影響、具体的な治療の必要性などは、多くの妊婦が気になる点です。
ここでは、そうした耳の詰まりに関するよくある質問について、簡潔にお答えします。
正しい知識を持つことで、不要な心配を減らしましょう。
Q1.耳抜きをしても効果がないのはなぜですか?
耳管が開きっぱなしになる耳管開放症では、耳管を強制的に開くための耳抜きは効果がないばかりか、逆効果になることがあります。
通常の耳詰まりは耳管が閉じているため耳抜きが有効ですが、この症状はその逆の状態だからです。
無理に試みると鼓膜を痛める可能性もあるため、耳抜きは行わないでください。
Q2.お腹の赤ちゃんへの影響はありますか?
耳管開放症の症状が、直接お腹の赤ちゃんに影響を及ぼすことはありません。
これは母体自身の症状であり、胎児の成長や健康に直接的な問題を引き起こすものではないため、その点は安心してください。
ただし、症状によるストレスが過度になると母体の負担となるため、つらい場合は我慢せず医師に相談することが大切です。
Q3.耳管開放症と診断されたら、特別な治療は必要ですか?
妊娠中の耳管開放症は、産後に自然治癒することがほとんどのため、特別な治療は行わず、セルフケアで経過を見ることが多いです。
症状が重く、日常生活に支障がある場合には、漢方薬や点鼻薬などが処方されることもありますが、治療は母体と胎児の安全を最優先に検討されます。
まずは医師の診断を仰ぎましょう。
まとめ
妊娠中に生じる耳の詰まりや自分の声が響くといった不快な症状の多くは「耳管開放症」が原因です。
これは妊娠によるホルモンバランスの変動や、つわりに伴う体重減少などが引き金となって、通常は閉じている耳管が開いたままになることで起こります。
症状がつらいときは、前屈して頭に血を集めたり、こまめに水分補給をしたりするセルフケアが有効です。
これらの症状は、ほとんどの場合、出産後にホルモンバランスが元に戻ることで自然に改善します。
しかし、症状が重い場合や不安なときは、我慢せずに産婦人科や耳鼻咽喉科の医師に相談してください。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/






