お腹の赤ちゃんの栄養|仕組みと妊娠中に摂るべき食事・栄養素を解説

おなかの中の赤ちゃんがどうやって栄養を受け取っているのか、その仕組みを理解することは、妊娠中の食事管理に役立ちます。
ママが摂取した栄養は、胎盤とへその緒を通じておなかの赤ちゃんへと届けられます。
この記事では、栄養が届く仕組みから、妊娠中に積極的に摂りたい栄養素、時期別の食事のポイントまで、わかりやすく解説します。
お腹の赤ちゃんに栄養が届く仕組みとは?
お腹の赤ちゃんは、口から食べ物を摂取するかわりに、ママの体から胎盤とへその緒を通じて栄養や酸素を受け取って成長します。
妊娠初期と胎盤が完成した後では、栄養を受け取る仕組みが少し異なります。
ママの血液がそのままおなかの中の赤ちゃんに流れているわけではなく、胎盤がフィルターのような役割を果たし、必要なものだけを赤ちゃんに届けています。
胎盤ができる前は「卵黄嚢」から栄養を受け取る
妊娠超初期、まだ胎盤が作られていない時期の赤ちゃんは、「卵黄嚢(らんおうのう)」と呼ばれる器官から栄養を受け取ります。
卵黄嚢は、受精卵が着床した後に作られる小さな袋状の組織です。
ここには、おなかの中の赤ちゃんが成長するために必要な栄養素が蓄えられており、胎盤が完成するまでの間の重要な栄養源となります。
卵黄嚢は胎盤の成長とともに少しずつ小さくなり、その役目を終えます。
胎盤完成後は「へその緒」を通じてママから栄養が送られる
妊娠16週ごろに胎盤が完成すると、本格的にママの体から栄養が送られるようになります。
ママが食事から摂取した栄養は、血液によって胎盤へ運ばれます。
胎盤では、ママの血液から栄養素と酸素が「へその緒」を通しておなかの中の赤ちゃんに届けられ、代わりに赤ちゃんから出た二酸化炭素や老廃物をママの血液へと戻す、ガス交換やフィルターの役割を担っています。
ママの栄養状態が赤ちゃんの将来の健康を左右する
近年の研究で、胎児期の栄養状態が、生まれてからの子どもの健康や、将来的な生活習慣病のリスクにまで影響を与えるという「DOHaD学説」が注目されています。
おなかの中の赤ちゃんは、ママの栄養状態に合わせて体の仕組みを調整しながら成長します。
そのため、妊娠中のママが栄養バランスの取れた食事を心がけることは、赤ちゃんの現在だけでなく、将来の健康の礎を築く上で非常に重要です。
妊娠中に特に意識して摂りたい6つの栄養素と食材
妊娠中は、普段の食事以上に栄養バランスを意識する必要があります。
特に、おなかの中の赤ちゃんの健やかな発育に不可欠ないくつかの栄養素は、不足しないように積極的に摂取することが推奨されています。
ここでは、特に重要とされる6つの栄養素と、それらを豊富に含む食材を紹介します。
毎日の食事に上手に取り入れて、おなかの赤ちゃんに十分な栄養を届けましょう。
【葉酸】赤ちゃんの先天的な異常のリスクを減らす
葉酸は、ビタミンB群の一種で、細胞分裂やDNAの合成に不可欠な栄養素です。
特に妊娠初期に重要で、おなかの中の赤ちゃんの脳や神経管が作られる際に必要とされます。
葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害という先天性異常のリスクが高まることが知られています。
妊娠を計画している段階から積極的な摂取が推奨されており、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、いちご、納豆などに多く含まれます。
【鉄分】ママの貧血を予防し赤ちゃんに酸素を届ける
妊娠中は、おなかの中の赤ちゃんに栄養と酸素を届けるために、血液の量が大幅に増加します。
そのため、血液の材料となる鉄分が不足しやすく、「妊婦貧血」になりがちです。
鉄分が不足すると、ママ自身のめまいや動悸といった症状だけでなく、おなかの赤ちゃんへの酸素供給が滞り、発育に影響が出る可能性もあります。
レバーや赤身の肉、あさり、小松菜などを意識して食事に取り入れましょう。
【カルシウム】赤ちゃんの骨や歯を形成する
カルシウムは、おなかの中の赤ちゃんの骨や歯といった丈夫な体を作るための基礎となるミネラルです。
妊娠中にカルシウムが不足すると、ママの骨に蓄えられているカルシウムが溶け出して赤ちゃんに供給されるため、将来的にママが骨粗しょう症になるリスクが高まります。
赤ちゃんの発育とママ自身の健康のために、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、豆腐などを十分に摂取することが大切です。
おなかの中の赤ちゃんのためにも意識しましょう。
【タンパク質】赤ちゃんの体を作るすべての基本となる
タンパク質は、胎児の筋肉、血液、内臓など、体のあらゆる部分の材料となる最も基本的な栄養素です。妊娠中は、胎児の成長はもちろん、胎盤や子宮を維持するためにも多くのタンパク質が必要になります。肉や魚、卵、大豆製品など、動物性と植物性のタンパク質をバランス良く組み合わせることが理想です。
妊娠中は、非妊娠時よりも多くのタンパク質が必要となるため、毎食、成人女性の一般的な推奨量である「手のひら1つ分」を目安としつつ、妊娠中期には1日あたりプラス5g、妊娠後期には1日あたりプラス25gの摂取を目安とすることが望ましいでしょう。
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【ビタミンD】カルシウムの吸収をサポートする
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨への沈着を促す働きがあります。
いくらカルシウムを摂取しても、ビタミンDが不足しているとその多くが体外に排出されてしまいます。
おなかの中の赤ちゃんの骨格形成を効率よく進めるためにも、カルシウムとセットで摂取したい栄養素です。
鮭やさんまなどの魚類、きのこ類に多く含まれるほか、日光を浴びることで体内でも合成されます。
適度な散歩も効果적です。
【亜鉛】赤ちゃんの細胞分裂を活発にする
亜鉛は、新しい細胞が作られる際のタンパク質の合成や酵素の働きをサポートするミネラルです。
細胞分裂が活発に行われる胎児期には、特に重要な役割を果たします。
おなかの中の赤ちゃんの健やかな発育や、味覚を感じる器官の形成にも関わっています。
亜鉛は、牡蠣や牛肉、豚レバー、チーズ、卵黄などに多く含まれています。
様々な食材からバランス良く摂取することを心がけましょう。
【妊娠時期別】食事で気をつけるべきポイントと摂取カロリーの目安
妊娠期間は、初期・中期・後期の3つのステージに分けられ、それぞれの時期でおなかの中の赤ちゃんの成長スピードやママの体の変化が異なります。
そのため、食事で気をつけるべきポイントや、必要となるエネルギー量も変化します。
時期ごとの特徴を理解し、おなかの赤ちゃんとママの双方にとって最適な食事を心がけることが大切です。
妊娠初期(〜15週):つわりでも食べやすいものを中心に葉酸を意識
妊娠初期は、つわりで食欲が落ちやすい時期ですが、おなかの中の赤ちゃんの重要な器官が形成される大切な期間です。
この時期は、無理にたくさん食べようとせず、そうめんやゼリー、果物など、自分が食べやすいものを少量ずつ口にしましょう。
栄養面では特に葉酸が重要になるため、サプリメントも活用しながら意識的に摂取してください。
1日に必要なエネルギー量は、妊娠前とほぼ同じか、プラス50kcal程度が目安です。
妊娠中期(16週〜27週):赤ちゃんの成長が加速!鉄分とタンパク質をプラス
妊娠中期に入ると、つわりが落ち着き、食欲が戻ってくることが多いです。
おなかの中の赤ちゃんは急速に成長し、胎盤も完成するため、多くの栄養を必要とします。
特に、赤ちゃんの血液や筋肉を作る鉄分とタンパク質を意識して増やしましょう。
貧血予防のためにも重要です。
この時期の付加エネルギー量は、1日にプラス250kcalが目安となります。
主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を心がけてください。
妊娠後期(28週〜):カルシウムを十分に摂りつつ塩分は控えめに
妊娠後期は、大きくなった子宮が胃を圧迫して一度にたくさん食べられなくなったり、妊娠高血圧症候群のリスクが高まったりする時期でもあります。食事は数回に分け、塩分の摂りすぎには注意が必要です。1日の付加エネルギー量はプラス500kcalを目安に調整します。
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お腹の赤ちゃんのために妊娠中は控えたい食べ物・飲み物
妊娠中は、おなかの中の赤ちゃんに十分な栄養を届けることと同時に、赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼす可能性のある食べ物や飲み物を避けることも重要です。
普段は何気なく口にしているものでも、妊娠中は摂取を控えたり、量に注意したりする必要があります。
ここでは、代表的なものをいくつか紹介し、その理由についても解説します。
食中毒のリスクがある生もの(刺身、生卵、ナチュラルチーズなど)
妊娠中は免疫力が低下するため、リステリア菌やトキソプラズマなどの食中毒菌に感染しやすくなります。
これらの菌に感染すると、流産や早産のリスクが高まったり、おなかの中の赤ちゃんに影響が出たりする可能性があります。
そのため、刺身などの生魚、生ハム、加熱殺菌されていないナチュラルチーズ、生卵などは避け、食材は中心部まで十分に加熱してから食べるようにしましょう。
赤ちゃんの発育に影響するアルコール
妊娠中のアルコール摂取は、胎盤を通じておなかの中の赤ちゃんに直接届き、発育の遅れや中枢神経系の障害などを引き起こす「胎児性アルコール症候群」の原因となる可能性があります。
安全な摂取量というものは確立されておらず、「少量なら大丈夫」というわけではありません。
おなかの中の赤ちゃんのために、妊娠がわかった時点から出産、授乳が終わるまでは、アルコールは完全に断つようにしましょう。
胎盤への血流を妨げる可能性のあるカフェイン
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは、過剰に摂取すると胎盤への血流を減少させ、おなかの中の赤ちゃんの発育に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
また、貧血の原因となる鉄分の吸収を妨げる作用もあります。
完全に断つ必要はありませんが、1日の摂取量には注意が必要です。
世界保健機関(WHO)では、1日あたりのカフェイン摂取量を300mgまでとしており、コーヒーならマグカップ2杯程度が目安です。
過剰摂取に注意が必要なビタミンA(レバーなど)
ビタミンAは、赤ちゃんの成長に必要な栄養素ですが、動物性のビタミンA(レチノール)を過剰に摂取すると、おなかの中の赤ちゃんに先天的な異常が起こるリスクが高まることが報告されています。
特に、レバーやうなぎなどには非常に多くのビタミンAが含まれているため、妊娠初期は摂取を控えるか、ごく少量にとどめるようにしましょう。
なお、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取の心配はありません。
水銀が含まれる一部の魚介類
魚介類は良質なタンパク質やDHAなどを含み、妊娠中に推奨される食材ですが、一部の大型魚には食物連鎖を通じて自然界のメチル水銀が蓄積されていることがあります。
この水銀を過剰に摂取すると、おなかの中の赤ちゃんの神経系の発達に影響を与える可能性があるとされています。
特に、キンメダイやメカジキ、クロマグロなどは摂取量に注意が必要です。
厚生労働省のパンフレットなどを参考に、魚の種類を選んで食べるようにしましょう。
つわり等で思うように食事が摂れない時の工夫
妊娠初期に多くの人が経験するつわり。
吐き気や食欲不振で、おなかの赤ちゃんのために栄養を摂らなければと分かっていても、思うように食事ができないことは大きな悩みです。
しかし、この時期の赤ちゃんはまだ小さく、多くの栄養を必要とするわけではありません。
焦らず、まずは「食べられる時に、食べられるものを」を基本に、いくつかの工夫を取り入れて乗り切りましょう。
食べられるものを少しずつ、数回に分けて口にする
つわりの時期は、空腹になると吐き気が強まることがあります。
食事を一度にたくさん摂ろうとせず、1日の食事を5〜6回に分けるなど、少量ずつ頻繁に口にする「分割食」を試してみましょう。
おにぎりやパン、クラッカー、果物など、手軽につまめるものを用意しておくと便利です。
また、冷たいものや酸味のあるものは比較的食べやすい傾向があります。
自分の体調と相談しながら、おなかが空きすぎないように調整してみてください。
栄養補助食品やサプリメントを上手に活用する
どうしても食事が喉を通らない時や、栄養バランスの偏りが心配な時には、栄養補助食品やサプリメントを上手に利用するのも一つの方法です。
特に、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低減するために重要な葉酸は、食事だけでは必要量を摂取するのが難しいため、サプリメントでの補給が推奨されています。
ただし、サプリメントはあくまで食事の補助です。
利用する際は、かかりつけの医師や薬剤師に相談し、適切な種類と量を守ることが大切です。
おなかの調子をみながら活用しましょう。
お腹の赤ちゃんの栄養に関するよくある質問
妊娠中の栄養について、多くのママが様々な疑問や不安を抱えています。
おなかの中の赤ちゃんのために、正しい知識を身につけておきたいものです。
ここでは、栄養摂取に関するよくある質問とその回答をまとめました。
日々の食事管理の参考にしてください。
Q1.ママが食べたものはどのくらいで赤ちゃんに届くの?
ママが食事をしてから、その栄養がおなかの中の赤ちゃんに届くまでには、数時間かかるといわれています。
食べ物が消化・吸収され、血液に取り込まれて胎盤に到達し、さらにへその緒を通じて赤ちゃんに渡るという過程を経るためです。
特定の時間に特定のものを食べなければならない、ということはありません。
Q2.食事の代わりにサプリメントだけで栄養を補っても問題ない?
サプリメントは特定の栄養素を補うのには有効ですが、食事の代わりにはなりません。
食事からは、ビタミンやミネラルだけでなく、タンパク質や食物繊維など、おなかの中の赤ちゃんの成長に必要な多様な栄養素を複合的に摂取できます。
あくまで食事を基本とし、不足しがちな栄養素をサプリメントで補助的に補う形が理想です。
Q3.体重増加が怖いので食事制限をしてもいい?
妊娠中の過度な体重増加は避けるべきですが、自己判断で極端な食事制限を行うのは危険です。
食事を制限すると、おなかの中の赤ちゃんに必要な栄養が届かなくなり、発育に影響が出る可能性があります。
適切な体重管理については、妊婦健診で医師や助産師に相談し、個々の状況に合わせた指導を受けるようにしてください。
まとめ
おなかの中の赤ちゃんは、胎盤とへその緒を通じてママが摂取した栄養を吸収して成長します。
妊娠中の食事は、おなかの赤ちゃんの健やかな発育だけでなく、将来の健康にも影響を与える大切な要素です。
葉酸や鉄分、カルシウムなど、特に重要な栄養素を意識しつつ、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を心がけることが基本となります。
つわりなどで食事が難しい時期もありますが、無理せず工夫しながら、赤ちゃんと自分自身の体を大切に過ごしましょう。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/








