妊娠中の頭痛|危険な症状と安全な対処法・カロナール解説

妊娠中の頭痛は、多くの妊婦が経験する一般的な症状の一つです。
しかし、その痛みは不安なものであり、胎児への影響を考えて薬の使用をためらう人も少なくありません。
原因は妊娠時期によって異なり、ホルモンバランスの変化や身体的な負担が関係しています。
この記事では、危険な頭痛のサインや、薬を使わないセルフケア、妊娠中でも比較的安全に使用できるカロナール(アセトアミノフェン)について解説します。
妊娠中に頭痛が起こりやすくなる主な理由
妊娠中は、女性ホルモンの急激な変化や血液量の増加、姿勢の変化など、身体にさまざまな変化が起こります。
これらの変化が、頭痛の引き金となることがあります。
特に、妊娠初期と中期以降では頭痛の原因となる要素が異なるため、時期ごとの特徴を理解することが、適切な対処につながります。
妊娠初期(〜15週)の頭痛:ホルモンバランスの急激な変化が影響
妊娠初期の頭痛は、つわりの症状の一つとして現れることがあります。
特に妊娠4週から9週頃にかけては、女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌量が急激に増加します。
このプロゲステロンには血管を拡張させる作用があるため、脳の血管が広がり、ズキズキとした片頭痛のような痛みが引き起こされるのです。
妊娠6週や8週頃にピークを迎える吐き気などのつわりの症状と同時に、頭痛を経験する人も少なくありません。
この時期の頭痛は、ホルモンバランスが安定してくるにつれて、自然に治まっていく傾向があります。
妊娠中期(16週〜)の頭痛:血液量の増加や姿勢の変化が原因
妊娠中期(妊娠5ヶ月頃から)になると、ホルモンバランスは安定してきますが、別の原因で頭痛が起こることがあります。
この時期は、胎児に栄養を送るために母体の血液量が妊娠前より約40〜50%も増加し、脳の血管に負担がかかりやすくなります。
また、お腹が大きくなることで姿勢が変化し、肩や首の筋肉が緊張して血行不良を招く「緊張型頭痛」も起こりやすくなります。
その他、鉄分が不足しがちな時期でもあるため、貧血が頭痛の原因となっている可能性も考えられます。
ストレスや睡眠不足も頭痛の引き金に
妊娠中は身体的な変化だけでなく、出産や育児に対する不安、体調の変化によるストレスなど、精神的な負担も大きくなります。
これらのストレスは自律神経の乱れにつながり、頭痛を悪化させる一因です。
また、お腹が大きくなることで寝苦しくなったり、頻尿になったりして睡眠不足に陥りやすいことも、頭痛を引き起こす原因となります。
心身ともにリラックスできる時間を作り、十分な休息をとることが大切です。
その頭痛は大丈夫?病院を受診すべき危険なサイン
妊娠中の頭痛の多くは生理的な変化によるものですが、中には注意が必要な病気が隠れている可能性もあります。
普段の頭痛とは違うと感じたら、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
以下に挙げるような症状が見られる場合は、速やかにかかりつけの産婦人科に連絡・受診してください。
これまで経験したことのない激しい痛みがある
「バットで殴られたような」と表現されるような、突然の激しい頭痛や、意識が朦朧とするほどの痛みを感じた場合は、非常に危険なサインです。
このような症状は、くも膜下出血など、脳の重大な病気の可能性があります。
妊娠とは直接関係のない病気である可能性も考えられるため、ただちに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。
普段から頭痛持ちの人でも、いつもの痛みとは明らかに違うと感じた場合は注意してください。
目の前がチカチカする、めまいを伴う
頭痛とともに、目の前に光がチカチカと見える「閃輝暗点」という症状が現れることがあります。
これは片頭痛の前兆として起こることが多い現象です。
しかし、同時にめまいやふらつき、手足のしびれなどを伴う場合は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害の可能性も否定できません。
また、後述する妊娠高血圧症候群のサインである場合もあるため、これらの症状が現れたら速やかに医師に相談してください。
むくみや高血圧の症状が見られる(妊娠高血圧症候群の疑い)
頭痛に加えて、急なむくみ、血圧の上昇、尿たんぱくといった症状が見られる場合、「妊娠高血圧症候群」の可能性があります。
これは、妊娠20週以降に発症することがある病気で、母子ともに危険な状態に陥ることがあります。
重症化すると、けいれん発作(子癇)や胎児の発育不全、常位胎盤早期剥離などを引き起こすリスクが高まるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
妊婦健診で血圧やむくみを指摘された際は、特に注意深く自身の体調を観察してください。
痛みがどんどん強くなる、または一向に治まらない
安静にしたり、セルフケアを試したりしても痛みが全く改善しない場合や、時間の経過とともに痛みが悪化していく場合も、受診の目安となります。
通常の片頭痛や緊張型頭痛であれば、休息や適切なケアである程度は和らぐことがほとんどです。
痛みが持続・悪化するのは、何か他の原因が隠れているサインかもしれません。
我慢しすぎず、医療機関に相談することが大切です。
受診に迷ったらどこへ行く?まずはかかりつけの産婦人科に相談
頭痛の症状で何科を受診すればよいか迷うかもしれませんが、妊娠中の場合は、まずかかりつけの産婦人科医に相談するのが基本です。
産婦人科医は、妊娠中の母体の状態を最もよく把握しており、その頭痛が妊娠に伴う生理的なものか、あるいは治療が必要な病気のサインなのかを判断してくれます。
診察の結果、脳神経外科や内科など他の専門科での検査や治療が必要だと判断されれば、適切な医療機関を紹介してもらえます。
薬に頼らない!妊娠中の頭痛を和らげるセルフケア方法
妊娠中はできるだけ薬を避けたいと考える人が多いでしょう。
幸い、多くの頭痛はセルフケアで和らげることが可能です。
ただし、頭痛のタイプによって対処法が異なるため、自分の痛みがどちらのタイプに近いかを見極めることが重要です。
ズキズキと脈打つような痛みは「片頭痛」、頭全体が締め付けられるような重い痛みは「緊張型頭痛」の可能性があります。
【片頭痛の場合】ズキズキする痛みは冷たいタオルで冷やす
ズキズキ、ガンガンと脈打つような痛みが特徴の片頭痛は、三叉神経の興奮によって放出されるCGRPという物質が血管を拡張させ、血管周囲で神経原生炎症が起こることが痛みの原因と考えられています。
そのため、拡張した血管を収縮させることが痛みの緩和につながります。
冷たいタオルや冷却シートをこめかみやおでこ、首の後ろなどに当てて冷やすと、血管が収縮し、痛みが和らぎます。
入浴やマッサージなど体を温める行為は、血管をさらに拡張させて痛みを悪化させる可能性があるため、避けるのが賢明です。
【緊張型頭痛の場合】重く締め付けられる痛みは首や肩を温める
頭全体がギューッと締め付けられるような、重く鈍い痛みが続く緊張型頭痛は、主に肩や首の筋肉の緊張による血行不良が原因です。
このタイプの頭痛には、血行を促進して筋肉のこりをほぐすことが効果的です。
蒸しタオルやカイロで首や肩の周りを温めたり、ぬるめのお湯でゆっくり入浴したりすると、血流が良くなり痛みが緩和されます。
ただし、片頭痛と緊張型頭痛を併発している場合もあるため、温めてみて痛みが悪化するようであれば中止してください。
光や音の刺激を避け、静かで暗い場所で安静にする
特に片頭痛の場合は、普段は気にならないような光や音、匂いに対して過敏になり、それらが頭痛を悪化させる要因となることがあります。
頭痛が始まったら、できるだけ静かで暗い部屋で横になり、外部からの刺激を遮断して休みましょう。
スマートフォンやテレビの光も刺激になるため、電源を切って目を閉じてリラックスする時間を作ることが、痛みを早く鎮める助けになります。
こまめな水分補給を心がけて脱水を防ぐ
体内の水分が不足する脱水状態も、頭痛を引き起こす原因の一つです。
特に、つわりで食事が摂りにくかったり、嘔吐してしまったりする妊娠初期は、気づかないうちに水分不足に陥りがちです。
また、夏場や暖房の効いた室内では汗をかきやすいため、意識的な水分補給が重要になります。
一度に大量に飲むのではなく、カフェインの入っていない水やお茶などを、1日を通してこまめに飲むように心がけましょう。
簡単な肩・首のストレッチで血行を促進する
長時間同じ姿勢でいることによる肩や首のこりは、緊張型頭痛の大きな原因です。
デスクワークの合間や、家事で一息ついた時などに、簡単なストレッチを取り入れて血行を促進しましょう。
ゆっくりと首を前後左右に倒したり、肩を大きく回したりするだけでも効果があります。
ただし、お腹に張りを感じたり、気分が悪くなったりした場合はすぐに中止し、決して無理のない範囲で行うことが重要です。
妊娠中でも飲める頭痛薬と避けるべき薬
セルフケアを試しても痛みが我慢できない場合は、薬の使用を検討することになります。
しかし、妊娠中の薬の使用は胎児への影響を考慮する必要があるため、自己判断は絶対に避けなければなりません。
薬を使用する際は、必ず事前にかかりつけの産婦人科医や薬剤師に相談し、安全性を確認した上で、指示された用法・用量を守ることが大前提です。
産婦人科で処方される「カロナール(アセトアミノフェン)」が第一選択
妊娠中の頭痛や発熱に対して、産婦人科で最も一般的に処方されるのが「カロナール」です。
この薬の主成分である「アセトアミノフェン」は、妊娠中のすべての期間において、比較的安全に使用できる解熱鎮痛薬とされています。
胎児への影響が少ないと考えられており、多くの妊婦に使用されてきた実績があります。
ただし、安全性が高いとされる薬でも、医師の指示なく過剰に摂取することは避けるべきです。
市販薬ならアセトアミノフェン単一成分の「タイレノールA」
どうしても病院に行けず、市販薬で対応したい場合は、アセトアミノフェンのみを有効成分とする薬を選ぶ必要があります。
代表的な市販薬としては「タイレノールA」があります。
市販の風邪薬や頭痛薬には、カフェインや他の鎮痛成分など、妊娠中は避けるべき成分が含まれていることが多いため、購入の際は必ず薬剤師に相談し、成分表示を確認してください。
あくまで緊急的な対応と考え、基本的には産婦人科で処方してもらうのが最も安全です。
自己判断は危険!ロキソニンやイブ(NSAIDs)は胎児への影響に注意
ロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェン(イブ)に代表される「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」は、妊娠中の自己判断での使用は避けるべきです。
特に妊娠後期(28週以降)にこれらの薬を使用すると、胎児の心臓近くにある「動脈管」という血管を収縮させてしまう「胎児動脈管早期閉鎖」を引き起こすリスクがあります。
これにより、胎児の心不全や肺高血圧症につながる可能性があるため、原則として使用は禁止されています。
妊娠に気づかずに薬を飲んでしまった場合の対処法
妊娠に気づく前に、普段から飲み慣れている頭痛薬を服用してしまったと不安になる人もいるかもしれません。
まずは慌てずに、いつ、どの薬を、どれくらいの量飲んだのかを記録し、次の妊婦健診の際に医師に伝えましょう。
一般的に、妊娠4週未満の「無影響期」と呼ばれる時期の服薬は、胎児への影響はほとんどないと考えられています。
過度に心配せず、正確な情報を医師に伝えて指示を仰ぐことが重要です。
妊娠中の頭痛はいつまで続く?時期による傾向
つらい頭痛がいつまで続くのか、見通しが立たないと不安になるものです。
妊娠中の頭痛は、その原因が妊娠時期によって異なるため、痛みが続く期間にもある程度の傾向が見られます。
もちろん個人差は大きいですが、一般的な傾向を知っておくことで、少しは気持ちが楽になるかもしれません。
妊娠初期の頭痛はつわりと同様に安定期には落ち着くことが多い
妊娠初期に起こる頭痛の主な原因は、急激なホルモンバランスの変化です。
このタイプの頭痛は、つわりの一症状として現れることが多く、胎盤が完成してホルモンバランスが安定してくる妊娠16週頃、いわゆる「安定期」に入ると、つわりの他の症状とともに自然と軽快したり、治まったりするケースがほとんどです。
今つらい症状に悩まされている人も、時期が来れば楽になる可能性があると知っておきましょう。
妊娠中期以降も続く場合は他の原因も考えられる
安定期に入っても頭痛が続く、あるいは妊娠中期から新たに頭痛が始まったという場合は、ホルモンバランス以外の原因が考えられます。
大きくなったお腹による姿勢の悪化や肩こり、体重増加による身体への負担、貧血、ストレスなどが主な原因です。
これらの原因による頭痛は、出産まで続いたり、痛みの度合いに波があったりします。
痛みが続く場合は我慢せず、かかりつけ医に相談して原因を探り、適切な対処法を見つけることが大切です。
妊娠中の頭痛に関するよくある質問
ここでは、妊娠中の頭痛に関して多くの妊婦が抱く疑問について、簡潔に回答します。
個別の症状については、かかりつけの医師に相談することを前提として参考にしてください。
Q1.頭痛の種類によって「冷やす」「温める」の対処法が違うのはなぜですか?
痛みの原因が逆だからです。
ズキズキする片頭痛は血管の拡張が、重い緊張型頭痛は血行不良が原因で起こります。
そのため、拡張した血管は冷やして収縮させ、血行不良は温めて血流を促すという、原因に合わせた逆のアプローチが効果的となります。
Q2.カフェインを控えたら頭痛がひどくなりました。どうすればいいですか?
毎日摂取していたカフェインを急にやめたことによる「カフェイン離脱頭痛」の可能性があります。
カフェインには血管を収縮させる作用があるため、急にやめると血管が拡張して頭痛が起こります。
1日1杯程度のコーヒーなら問題ないとされていますので、徐々に減らすか、かかりつけ医に相談してください。
Q3.妊娠前から片頭痛持ちです。以前処方された薬は飲んでも大丈夫ですか?
自己判断で飲むのは危険です。
妊娠前に処方された薬の中には、妊娠中は使用できない成分が含まれている可能性があります。
必ずかかりつけの産婦人科医や、その薬を処方した医師に妊娠中であることを伝えて相談し、安全に使える薬を改めて処方してもらいましょう。
まとめ
妊娠中の頭痛は多くの妊婦が経験する症状ですが、その原因は時期によって異なります。
ホルモンバランスの変化による片頭痛や、身体的な負担からくる緊張型頭痛が主ですが、中には危険な病気のサインが隠れていることもあります。
経験したことのない激しい痛みや、高血圧、むくみを伴う場合は、速やかに産婦人科を受診してください。
痛みがつらい時は我慢せず、まずはセルフケアを試し、改善しない場合は医師に相談の上でアセトアミノフェンなど安全性の高い薬を適切に使用することが重要です。
髙下葉月 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/)
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/












