前置胎盤と診断されたら。原因や治る可能性、妊婦の日常生活の過ごし方

妊婦健診で「前置胎盤」と診断されると、多くの人が大きな不安を感じます。
前置胎盤はハイリスク妊娠の一つとされますが、どのような状態なのか、そして今後の日常生活で何に気をつければよいのかを正しく理解することが大切です。

この記事では、前置胎盤の種類や原因、そして治る可能性、出産までの過ごし方について、わかりやすく解説します。

前置胎盤とは?子宮の出口を胎盤がふさいでいる状態のこと

前置胎盤とは、通常は子宮の上の方に付着する胎盤が、低い位置に付着し、子宮の出口(内子宮口)の一部または全部を覆ってしまっている状態を指します。
胎盤が赤ちゃんの通り道をふさいでしまうため、経腟分娩は困難となり、分娩時に大量出血を起こす危険性が高まります。

そのため、妊娠中は慎重な管理が必要となり、多くの場合、帝王切開による出産が選択されます。

「全前置胎盤」や「低置胎盤」など4つの種類とそれぞれの違い

前置胎盤は、胎盤と子宮口の位置関係によって4つの種類に分類されます。
胎盤が子宮口を完全に覆っている状態を「全前置胎盤」、一部を覆っている場合を「一部前置胎盤」といいます。
胎盤の端が子宮口にかかっている状態は「辺縁前置胎盤」と呼ばれます。

また、胎盤が子宮口を覆ってはいないものの、非常に近い位置(2cm以内)にある状態を「低置胎盤」と呼び、出血のリスクがあるため前置胎盤に準じた慎重な管理が行われます。

前置胎盤と診断される確率は?全妊娠の0.3〜0.6%

前置胎盤と診断される頻度は、全分娩の1%弱と報告されています。

妊娠中期までの健診では、胎盤が低い位置にあると指摘されることは比較的よくありますが、その後の週数の経過とともに子宮が大きくなることで胎盤の位置も上昇し、最終的に前置胎盤と診断されるケースは一部に限られます。

前置胎盤はなぜ起こる?考えられる主な原因とリスク要因

前置胎盤が起こる直接的な原因は、まだ完全には解明されていません。
しかし、帝王切開や子宮内の手術(子宮筋腫核出術など)の経験によって子宮内膜に瘢痕があると、受精卵がその部分を避けて子宮の下方に着床しやすくなることが一因と考えられています。

その他、高齢妊娠・高齢出産、多胎妊娠、喫煙、過去の流産や人工中絶手術の経験などもリスクを高める要因として挙げられます。

前置胎盤は治る可能性がある?週数とともに胎盤の位置が上がる仕組み

妊娠中期頃までに前置胎盤やその疑いを指摘されても、最終的に診断が確定するわけではありません。
妊娠週数が進むにつれて子宮が大きくなる過程で、特に子宮の下側(子宮下節)が引き伸ばされます。
これにより、あたかも胎盤の位置が子宮口から離れて上方へ移動したように見えることがあります。

これは胎盤が実際に移動するわけではありませんが、この現象によって多くのケースで状態が改善されます。

いつ診断が確定する?妊娠32週ごろが最終的な判断の目安

妊娠初期や中期では胎盤の位置が低いことが多いため、診断はすぐには下されず、超音波検査で慎重に経過観察を行います。
子宮の増大に伴う胎盤の位置の変化が落ち着いてくる、妊娠30週から32週ごろに最終的な診断がなされるのが一般的です。
この時期を過ぎても胎盤が子宮口を覆っている場合は、前置胎盤と診断が確定し、出産に向けた具体的な管理計画が立てられます。

前置胎盤の代表的な症状は「警告出血」|痛みを伴わないのが特徴

前置胎盤で最も特徴的な症状は、妊娠中期以降に起こる「警告出血」です。
これは、お腹の張りや痛みを伴わずに、突然性器から出血するものです。
出血の量は、おりものに血が混じる程度の少量から、月経時のような多量のものまで様々です。

子宮が大きくなることや軽い子宮収縮によって、胎盤の一部が子宮壁からわずかに剥がれることで発生します。
少量でも出血があった場合は、自己判断せず速やかにかかりつけの医療機関に連絡してください。

妊婦さん(母体)に起こりうるリスク

前置胎盤における母体の最大のリスクは、コントロールが難しい大量出血です。
妊娠中の警告出血だけでなく、特に陣痛が始まったり、帝王切開の手術中や産後に、胎盤が剥がれる際に大出血を起こす危険性があります。

出血量が多すぎると出血性ショックに陥り、母体の生命に危険が及ぶ可能性も否定できません。
また、胎盤が子宮の筋肉に深く食い込む「癒着胎盤」という問題が合併すると、さらに出血リスクが高まります。

お腹の赤ちゃん(胎児)に起こりうるリスク

母体の出血が多くなると、胎盤への血液供給が減少し、赤ちゃんへ送られる酸素や栄養が不足する「胎児機能不全」に陥る危険性があります。
また、大量出血など母体の状態が悪化した場合は、妊娠週数が早くても緊急帝王切開が必要になることがあります。
その結果、赤ちゃんが予定より早く生まれる「早産」となり、低出生体重や未熟性に伴うさまざまな合併症のリスクを伴います。

前置胎盤と診断された妊婦さんの日常生活|安静にするためのポイント

前置胎盤と診断されたら、妊娠中の日常生活では出血を予防することが最も重要です。
そのため、基本的には「安静」を心がける必要があります。
ただし、どの程度の安静が必要かは、前置胎盤の種類や出血の有無といった個々の状況によって異なります。

主治医から具体的な指示があるため、それに従い、お腹に力が入る動作や子宮収縮を促す行動は避けるようにしましょう。

仕事は続けても大丈夫?デスクワークでも注意が必要

仕事の継続については、業務内容や通勤の負担、出血の有無などを考慮して主治医が判断します。
立ち仕事や重労働はもちろん避けるべきです。
一見負担が少ないように思えるデスクワークであっても、長時間同じ姿勢でいることは血流を滞らせ、お腹の張りを誘発する原因になりかねません。

仕事を続ける場合は、こまめな休憩や時差出勤、在宅ワークへの切り替えなど、職場と相談して負担を軽減する工夫が求められます。

性交渉や激しい運動は出血のリスクがあるため原則禁止

性交渉は子宮口付近にある胎盤を直接刺激し、大量出血を引き起こす可能性があるため、前置胎盤と診断された場合は原則として禁止されます。
運動に関しても、ジョギングなどの激しいものはもちろんのこと、お腹に圧力がかかったり、強く張ったりするようなマタニティヨガやストレッチなども避けるべきです。

どの程度の活動が許可されるかは、必ず主治医に確認し、その指示に従ってください。

長時間の移動や旅行は計画を見直しましょう

長時間の移動や旅行は、体に負担がかかりお腹の張りを誘発しやすいため、計画の見直しが必要です。
万が一、旅先で出血などのトラブルが起きた際に、すぐに対応できる医療機関がない場合は非常に危険です。

特に里帰り出産を考えている場合は、移動の時期や手段について早めに主治医とよく相談することが不可欠です。
状況によっては、診断を受けた病院で出産することが最も安全な選択となる場合もあります。

お腹の張りを防ぐための具体的な過ごし方

お腹の張りは子宮収縮のサインであり、出血の引き金になりうるため、日常生活でできるだけ避けることが重要です。
具体的な過ごし方として、重い物を持たない、階段の上り下りを減らす、長時間の立ち仕事や歩行を避けるといった工夫をしましょう。
また、ストレスや疲労を溜めないよう、十分な休息をとることが大切です。

便秘でいきむこともお腹の張りにつながるため、食生活に気をつけ、必要であれば医師に相談してください。

出血がみられた場合は管理入院が必要になることも

少量でも出血が認められた場合や、お腹の張りが頻繁に起こる場合は、安静の徹底と緊急事態への迅速な対応のために入院管理が必要となることがあります。
入院中は、子宮収縮抑制薬の点滴を行ったり、出血量や胎児の状態を24時間体制で厳重にモニタリングします。

入院生活は不安になることもありますが、母子にとって最も安全な環境を確保するための重要な医療措置です。

前置胎盤の出産方法は?安全を最優先に予定帝王切開を選択

前置胎盤では胎盤が産道をふさいでいるため、経腟分娩を行うことはできません。
分娩時の大出血という最大のリスクを回避し、母子ともに最も安全に出産を終えるために、あらかじめ手術日を決めて行う「予定帝王切開」が選択されます。

低置胎盤の場合も、胎盤と子宮口の距離が近く出血リスクが高いと判断されれば帝王切開となります。
そのため、希望していても無痛分娩は選択できません。

帝王切開の手術はいつ行う?妊娠37週ごろが一般的

帝王切開の手術時期は、赤ちゃんが十分に成熟し、かつ陣痛が始まる前に設定するのが理想的です。
自然な陣痛が始まって子宮収縮が強くなると、胎盤が剥がれて大出血を起こすリスクが高まるためです。
こうした理由から、多くの施設では妊娠後期にあたる妊娠37週台での予定帝王切開が計画されます。

ただし、出血が多い場合など母子の状態によっては、37週を待たずに緊急で手術が行われることもあります。

大量出血に備えて「自己血貯血」を行うケースがある

前置胎盤の帝王切開では、手術中の大量出血に備える必要があります。
その対策の一つが「自己血貯血」です。
これは、手術に備えてあらかじめ自身の血液を採血し、冷蔵保存しておく方法を指します。

手術時に輸血が必要になった際、他人の血液ではなく自分の血液を使うことで、感染症やアレルギー反応といった副作用のリスクを最小限に抑えることができます。
通常、貧血がないことを確認した上で、妊娠中期から後期にかけて数回に分けて採血が行われます。

癒着胎盤を合併している場合の出産リスク

癒着胎盤とは、胎盤の組織が子宮の筋層内に深く食い込んでしまっている状態です。
特に帝王切開の既往がある前置胎盤で合併するリスクが高くなります。

癒着胎盤を合併していると、帝王切開で赤ちゃんが生まれた後に胎盤がうまく剥がれず、コントロール不能な大量出血を引き起こす危険性が極めて高くなります。
出血を止めるために、子宮を摘出する手術が必要となる場合もあります。

前置胎盤に関するよくある質問

ここでは、前置胎盤と診断された妊婦さんやそのご家族からよく寄せられる質問について回答します。

Q1.低置胎盤と前置胎盤はどう違うのですか?

胎盤が子宮の出口(内子宮口)を覆っているかどうかが最も大きな違いです。
前置胎盤は、胎盤が子宮口を一部でも覆っている状態です。
一方、低置胎盤は胎盤が子宮口を覆ってはいないものの、その縁が子宮口から2cm以内に位置する状態を指します。

Q2.前置胎盤による入院や帝王切開に医療保険は適用されますか?

はい、ほとんどの場合で適用されます。
前置胎盤に関連する管理入院や帝王切開手術は、医学的な必要性のある「異常分娩」として扱われるため、公的医療保険の対象です。

また、ご自身が加入している民間の医療保険からも、契約内容に応じて入院給付金や手術給付金が支払われます。

Q3.妊娠中期で「前置胎盤の疑い」と言われました。これから治る可能性はありますか?

はい、治る可能性は十分にあります。
妊娠初期(8週頃)や妊娠中期(16週頃)の段階では、子宮がまだ小さいため胎盤の位置が低く見えることは珍しくありません。

多くの場合、子宮が大きくなるにつれて胎盤の位置も上がっていきます。
過度に心配せず、医師の指示に従いましょう。

まとめ

前置胎盤は、胎盤が子宮の出口を塞いでしまうハイリスクな状態ですが、適切な管理で安全な出産を目指すことが可能です。
妊娠週数が進むにつれて自然に改善するケースも少なくありません。
診断が確定した場合は、出血予防のための安静な生活を心がけ、予定帝王切開に備えます。

主治医や助産師と密に連携を取り、指示に従うことが大切です。
産後の回復には個人差があるため、退院後も無理をしない生活を送りましょう。


 
大島はり灸院は完全予約制です。

この記事の監修者

髙下葉月
大島はり灸院 院長。
呉竹鍼灸柔整専門学校卒業。
高校卒業後から5年間、鍼灸院・介護施設にて臨床経験を積む。
資格取得後は本八幡鍼灸院に入社し、2022年に系列院である大島はり灸院の院長に就任。
現在は妊娠中・産後ケアを中心に、逆子・マタニティ腰痛・肩こり・頭痛・むくみなど幅広い不調に対応している。

【資格】
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、トコちゃんベルトアドバイザー

【経歴】
呉竹鍼灸柔整専門学校 卒業(https://www.kuretake.ac.jp/
本八幡鍼灸院入社
大島はり灸院院長就任

【SNS】
インスタグラム:https://www.instagram.com/oojimaharikyuin/?hl=ja
アメーバブログ:https://ameblo.jp/oojima-harikyu/